
多くの組織が障害者の雇用を推進している。にもかかわらず、障害のある従業員が実力を発揮し、成功するのを助ける文化が職場にあるかと問われて、イエスと答えられるのは一部の組織に限られるのが現状だ。障害を持つ従業員が不安を抱くことなく、みずからの障害を公表することでエンゲージメントを高め、実際にキャリアで成功するには、さらにインクルーシブな環境を整備することが欠かせない。本稿では、職場文化に関する調査を通じて、従業員が安心して自分の障害を公表できる環境の構築に必要な5つの要因について論じる。
まず、よい知らせから始めたい。多くの組織が、かつてないほど大勢の障害者を雇用するようになっている。
相当な数の組織が障害者やそこに含まれるサブグループ(神経疾患患者など)、他のコミュニティ(人種、ジェンダー、LGBTQなど)にとってインクルージョン(包摂)が意味することへの理解を深めると誓い、あらゆる人たちをサポートするビジネス環境を構築するために措置を講じてきた。
多くの組織がそのような取り組みを行うのは、障害者の採用が組織に利益をもたらすことが証明されてきたからだ。実際に、自社は大きな進歩を遂げたと考えている組織は多い。アクセンチュアによる最新のグローバル調査によれば、企業の経営幹部約1750人のうち67%が、自社が障害を持つ従業員をサポートし、そのために適切なテクノロジーと正しい環境を整えていると回答した。
さて、次は悪いニュースだ。このように明らかな進捗があるにもかかわらず、筆者らの調査では、障害を持つ従業員5870人のうち、自分の勤務先に障害者が実力を発揮し、成功を助けるための確固たる職場文化が存在すると回答した人は、20%にすぎなかった。
この調査では、回答者の76%が自分の障害について職場、たとえばHR部門、同僚、上司やマネジャーに対して、すべてを知らせてはいないと答えている。さらに、最高経営幹部や彼らの直属の部下であっても、自分が障害を持つことを公表していない割合は80%に上った。
これは悪循環だ。ビジネスリーダーは、障害を持つ従業員にとってよりインクルーシブな環境を構築するために何ができるかを、もっと学ぶ必要がある。
にもかかわらず、筆者らの研究および関連するインタビュー調査によれば、障害のある従業員は、障害を公表すれば報復を受けたり、昇進が遅れたり、あまり有意義ではないポジションに異動させられたりするのではないかと不安を抱いている。また、ほとんどの人にとっては、たとえサポートのある環境であっても、障害は極めて個人的な事象であり、それを公表するのはおそらく難しい決断になるのが現状だ。