(4)在宅勤務とオフィスライフの「いいとこ取り」を意図的に行う

 在宅勤務は、大規模な自然実験だった。何が生産性を高めるのか、あるいは損ねるのか、そして自分が何に喜びを感じるのか、多くを学んだことだろう。

 自宅でもオフィスで使っていた大型のモニター2台が切実に必要だという実務的な気づきもあれば、逆に在宅勤務のほうがきちんと昼食を取ったり、散歩の時間を増やしたりできるので、そうした行動が精神面のサポートになっているという実感もあるだろう。

 自分自身に関する発見の中には、社交に関するものもあったのではないか。自分の生産性をサポートする最善のソーシャルリズム(社会的刺激の規則正しさ)は、どのようなものだったか。ディープワークを行うために新たな方法を取り入れただろうか。

 仕事を中断されることに対して、これまでと異なる方法で対処したか。コミュニケーションをより効率的に行う方法を考え出したか。同僚と直接会えないことで、何が足りないと感じたか。会議や出張に行けなくなることで、残念に思ったことは何だろうか。

 私たちの行動や習慣は、環境に大きく影響される。オフィスに復帰して環境が変わっても、パンデミック下の習慣で維持したいと思うことや、何かプラスになることがあれば、努めて意識的にそれらを継続する必要がある。

 新鮮であっても以前と変わらないオフィス環境の中では、意図的に習慣化しなくてはならない。そうしなければ、あっという間に以前と同じやり方に戻ってしまうだろう。

 昼休みの散歩や健康的な昼食のように、在宅で仕事をしている時に定着したはずのよい習慣も、オフィスに復帰して仕事環境やルーチンが元に戻れば、非常に脆く崩れやすくなってしまう。

 したがって、まったく新しい習慣を身につけるつもりで、ほぼ振り出しに戻って築き直すことが必要になる。習慣化するには、それに結びつく一貫した手がかりが必要であり、自宅にあった手がかりはもはや、少なくとも同じ形では存在しない可能性が高いからだ。

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 オフィス復帰に不安を感じているからといって、人として脆い、あるいはコーピングスキルが低いというわけではない。こうした種類の変化によって不安が高まるのには、正当な理由がある。

 本稿で紹介したヒントを試してみると、環境の変化をできる限りスムーズに乗り切り、同僚の考え方、そして彼らがこの変化をどのように乗り切ろうとしているかを、より理解するのに役立つだろう。


"Why You're So Anxious About Going Back to the Office," HBR.org, July 09, 2021.