
ストレスやバーンアウトといったメンタルヘルスの問題は、誰にでも起こりうる。だが、実際に鬱や不安障害を抱えた時、上司にどう伝えるべきかわからずに、状況を悪化させてしまうことが少なくない。しかし、身体の健康と同様、私たちの心理状態は人生の出来事によって浮き沈みを経験しているため、誰もが一定レベルで理解を示してくれるはずだと筆者は指摘する。本稿では、実際に全般性不安障害(GAD)であることを職場に打ち明けた経験を踏まえて、職場でメンタルヘルスの問題を打ち明けるための4つのステップを紹介する。
かつて会社勤めをしていた時、私は自分が全般性不安障害(GAD)であることを打ち明けたことがある。だが、その時にはすでに手遅れだった。
私は鬱によって消耗し、基本的なメールを書くことはもとより、綿密性が求められる仕事(そのために採用されたのだが)も、以前のようにはできなくなっていた。優秀だった業績はみるみる悪化し、不安を抱えながらも会社に病気を明かし、最終的には休職せざるをえなくなった。
いま思えば、早い段階でシンプルな対策を講じていれば、そうした状態は避けられたかもしれない。私自身が大きな混乱に陥ることも、会社が予定外の作業を強いられることもなかったかもしれない。
当時は知らなかったのだが、生涯で受診が必要なメンタルヘルスの状態を経験する人は、最大で80%に上るという(本人が自覚していない場合を含む)。最高経営幹部であっても、一般社員であっても、この傾向は変わらない。だが、従業員のほぼ60%は、職場で自分のメンタルヘルスの状況について一度も話をしたことがないという。
多くの業績優秀者(私のように不安を抱いている者を含む)は、このようなつらい経験を通じて強くなることが多い。このような状況に陥るのは自分だけだと思っていたが、そうではなかったのだ。
身体の健康と同様に、メンタルヘルスにおいても、良い時から悪い時まで浮き沈みがある。私たちのほとんどは、人生の出来事に応じて、ストレスやバーンアウト(燃え尽き症候群)、鬱や不安などの診断対象となる症状の間を行き来する。バーンアウトに比べると、双極性障害を会社に打ち明けるのは難しく感じるかもしれないが、誰もが一定のレベルで理解できるはずだ。
これは、コロナ禍や人種差別のトラウマのように新たなストレス要因が次々と生じたこの1年半の間に、かつてないほど当てはまるようになった。誰もが社会的困難を経験し、リモートワークによって仕事とプライベートの線引きが曖昧になったことで、マネジャーも部下も同僚も、これまでになく自身の弱みをさらけ出し、自分に忠実になった。
体操選手のシモーネ・バイルズやテニス選手の大坂なおみ、ヘンリー王子とメーガン・マークル夫妻の勇気ある言動からも、社会全体が恩恵を受けたといえるだろう。彼らは公共の場で、メンタルヘルスの問題を抱えていることを打ち明けただけでなく、自分のウェルビーイングを最優先する難しい決断を下したのだ。
そうはいっても、依然としてスティグマ(負の烙印)が大きな影響を及ぼす場合がある。
私も自分に対してスティグマを抱き、不安や鬱になるのは弱い人間であり、恥じるべきだと、みずから言い聞かせていた。社会的スティグマによって、もし自分の症状を公にすれば、私は何らかの評価を受けて、キャリアにも影響が出るだろうと思い込んでいた。
しかし、ここ数年の間に、私はさまざまな場所で自分の症状を明らかにしたが、恐れていたことは何一つ現実にならなかった。
そこで私は、自分自身の経験から、職場のメンタルヘルス文化を変えることを目指す非営利組織マインド・シェア・パートナーズを設立した。もし、あなたが職場でメンタルヘルスの問題を打ち明けることを考えているなら、次のことを推奨したい。