改革のゴールにすべきは
DXではなくCXの実現である
編集部(以下色文字):高家さんは2019年にカインズの社長に就任されると、ご自身の在任期間を第3創業期だと位置付けて、「IT小売業」として価値創造するという目標を掲げ、大胆な改革に着手されました。2019年度には業界首位の売上高を記録するなど、改革の成果は着実に上がっていると思いますが、就任当時はどのような問題意識を持たれていたのですか。
高家(以下略):ホームセンター業界における企業間の競争が年々激化していることは確かですが、2003年以降、市場規模が3兆9000億円台を超えてからの20年近く、業界全体としては横這いの状態が続いています。また、市場がトップクラスの数社の売上げで構成されている状況も変わらず、その意味では比較的変化が少ない業界だといえます。
厳密に言えば、「ホームセンター市場」というものは存在しません。ホームセンターが特徴的に扱っているのは、職人向けの部材や工具など一部に限られます。ホームセンターの売上げを詳細に見ると、シャンプーや洗剤などの日用雑貨はドラッグストアやeコマースと、飲料はスーパーマーケットと競争しています。カインズが得意とするインテリアは専門店が競合です。それぞれが固有の市場を形成する中、ホームセンターが取り扱う商品の売上げをすべて足し合わせてホームセンター市場だと名乗っているにすぎません。