経営戦略論は原点回帰の好機にある
過去数十年間で、戦略は高度化し、複雑化してきた。大企業であれば、マーケティング戦略(消費者の嗜好を追跡し把握する)、企業戦略(シナジー効果を得る)、グローバル戦略(世界中で事業機会をとらえる)、イノベーション戦略(競合に先んじる)、デジタル戦略(インターネットを活用する)、ソーシャル戦略(オンラインでコミュニティと関わる)などを備えているだろう。これらの各分野において、有能な従業員たちが多数の緊急案件に取り組んでいる。
企業は、こうした課題への対応を当然検討する。急速な技術進化や国際競争、変わり続ける消費者の嗜好など、企業は多くの重圧に向き合っている。そしてそれらの重圧は、事業のやり方を覆しつつある。新たな課題の一つひとつに対処する過程で、我々は組織にこれまで以上の要求をし、従業員にこれまで以上の期待をかけている。
筆者が研究やケーススタディ執筆のために企業を訪問すると、短期間のうちに限られたリソースを使って、多くのことを成し遂げている人々の姿に驚かされる。同時に、長時間労働や、不可能とも思われる高い目標を見ると、とても心配になる。