日本企業に立ちふさがる変革の壁

 脱炭素、デジタル経済化、米中対立に代表される地政学リスクの顕在化、さらに新型コロナウイルス感染症など、多様な環境変化がかつてない速度と頻度で日本経済、日本企業に襲いかかっている。かねてから叫ばれて久しい日本企業の変革は、いよいよ待ったなしの状況だ。

 ベイン・アンド・カンパニーでは、これまで数多くの日本企業の変革の手助けをしてきた。我々の経験では、「そもそも変革機運が高まらない」「変革を始めても現場が面従腹背で遅々として進まない」「尻すぼみになって頓挫してしまう」などと、非常に多くの企業が変革の壁にぶつかっている。また外部投資家からも、遅々として進まない日本企業に対する失望やフラストレーションの声を聞くことも多い。企業変革はどこの国・地域においても容易ではないが、とりわけ日本企業にとっては経営における“苦手種目”といえるのではないだろうか。

 本稿では、筆者の一人であるデイヴ・マイケルズとケビン・マーフィーによる論文「競争力の向上は『変革力』の測定から始まる」のフレームワークを切り口として、「チェンジ・パワー」と呼ぶ企業変革力についてのグローバルおよび日本企業の調査結果を踏まえ、日本企業の変革力向上のための糸口を提示したい。