デルタ航空はなぜ
急速な環境変化に対応できたのか
2020年3月は、デルタ航空にとってまさに前代未聞の1カ月だった。渡航制限と新型コロナウイルス感染症に対する恐怖によって、予約数がマイナスに転じた。予約キャンセル数が新規予約数を上回る状態で、最悪期には85%の減便を余儀なくされた。これほどのビジネスの急降下は9.11同時多発テロの後でさえ起こらなかったことであり、それが日を追うごとに加速していったのである。
前例のない変化に、本気の対応が求められた。米国でロックダウンが施行されてから1週間後、デルタは大口の法人クライアントに電話をかけて、レジャー旅行者に関する調査を開始した。より安心して空の旅に出かけてもらうために、我々にいったい何ができるだろうかと問いかけたのだ。顧客からは、たとえマスク着用が義務付けられて、換気システムが強化され、清掃が徹底されても、「見知らぬ人の隣に座ることにはやはり抵抗がある」という答えが相次いだ。
デルタの幹部は、たとえコストがかさむことになろうと、中央席の販売を中止することが最善策だと判断した。CEOのエド・バスティアンがこの決断を下した2020年4月の第1週は、いずれにしても機内が満席ではなかったため、直接的なインパクトは弱かった。だが、彼とそのチームが挑む長期戦が始まった。