個人へのヒント
仕事中にデスクの前から離れることができるなら、簡単で強力な方法がある。「畏敬の散歩」だ。20分ほど歩き回り、好奇心を働かせ、周囲にある日常的な美しさを観察しよう。自宅の庭や近所など、身近な場所でかまわない。
筆者らのワークショップの参加者は、畏敬の散歩を通じて、他人の存在や、いつも急いで通り過ぎている場所や物に気がついている。たとえば、花から花に飛び移る蜂が、ふと目に留まるのだ。ワークショップが終わった後は、インスピレーションが湧いて、心が落ち着き、集中力が高まったという感想が寄せられている。
さらに望ましいのは、自然の景観の中を散歩することだ。研究からも、自然の中の散歩は都会の環境に比べて、気分やウェルビーイングに大きなプラスの効果があることがわかっている。自然は成長とレジリエンスを実感させ、驚きと畏怖の念の力強い源になる。
自然のリズムは、私たちが自然界の一部であり、自然と同じように持続していることを思い出させる。筆者の一人(デイビッド)が協力しているミシガン州のテクノロジー企業のCEOは、木々や水のある景色を自転車で走ることを日課にしている。自分より大きな何かの一部であることを実感しながら、エネルギーとレジリエンスを高めているのだ。
デスクから離れられない人は、目の前にあるウェブ上の驚きを利用しよう。いくつかの研究によると、動画には畏敬の念を起こさせる効果がある。『Free Solo』(フリーソロ)『Planet Earth』(プラネットアース)、アカデミー賞長編ドキュメンタリー章を受賞した『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』など、賞を獲得しているドキュメンタリー作品から刺激を受けるのもいいだろう。アマンダ・ゴーマンの詩「私たちが登る丘」の朗読は鳥肌ものだ。
音楽のハーモニーや複雑さも、畏敬の念を高め、インスピレーションを与える。動画や音楽を集めた自分だけの「畏敬のプレイリスト」を作成し、行き詰まったときに数分間、じっくり鑑賞する。「いま、ここで何が美しいだろうか」というシンプルな問いかけも、畏敬の念が沸き起こる瞬間を引き出せるだろう。
親切や寛大さ、忍耐を物語る行動など、よいニュースを伝えるニュースサイトを見るという方法もある。人類の善意、寛大さ、良識を描くストーリーをPCに保存しておこう。圧倒されそうになり、あるいは消耗して、気持ちを高めたい時に、このファイルをクリックする。一人の人間が変化をもたらすシンプルなストーリーは、世界中の人々にインスピレーションを与えるだろう。