Illustration by Jam Dong

ジョージ・フロイドが白人警察官に殺害された事件をきっかけに人種差別問題が表面化し、コロナ禍で差別や格差の問題がより深刻化する中、米国の政治的分極化は急速に進行した。人種や経歴の違いから生まれる誤解や衝突を乗り越えながら、多様性がもたらす価値を最大限に発揮するうえで、リーダーは何をすべきなのか。本稿では、米国陸軍に所属する筆者らが、そのために有効な4つの教訓を示す。


 2020~2021年の間、多様性に富むチームが協力し続けるために必要だったことは何か。

 筆者らは6人は全員、米国陸軍で日常のオペレーションと戦略を担当するシニアエグゼクティブだ。しかし、軍での訓練と職務以外では、かなり異なるバックグラウンドを持つ。

・ファーネルはイニシアティブグループの副部長を務め、フロリダ州中部出身の黒人だ。経営管理論とデータ分析と砲撃作戦について学び、韓国の議政府(ウィジョンブ)市に住んでいたことがある。

・マクマナスは立法補佐官を務め、ペンシルバニア州中部出身の白人女性だ。ジャーナリズムと政治学、そして医療について学んできた。トルコのイズミルに住んでいたことがある。

・イムスは調達計画の立案を担当し、軍人一家で育ったアジア系男性だ。エンジニアリングとリテールバンキングについて学び、日本の福生に住んでいたことがある。

・ブランチはエグゼクティブプランナーであり、ミシガン州南西部出身の黒人だ。都市地理学、機動作戦、組織コミュニケーションについて学び、ドイツのグラフェンバーに住んでいたことがある。

・バックナーはエグゼクティブスピーチライターであり、オクラホマ州中部出身の黒人男性だ。経営管理論、高等軍事学、戦略的メッセージングについて学び、ポーランドのポズナンに住んでいたことがある。

・テイラーは広報官を務め、軍人一家に育った黒人男性だ。軍に常駐する心理学とコミュニケーションの専門家である。世界各国で働き、ドイツのカイザースラウテルンに住んでいたことがある。

 6人の中には外向的な者もいれば、内向的な者もいる。彼らの年齢は、下は34歳、上は47歳だ。政治的・宗教的属性や家族関係も多様である。

 それでも、この1年半(コロナ禍、そして米国において極めて分断的な国政選挙と市民的動乱が起きた時期)、筆者らのグループはこれまでになく緊密につながっていた。

 多様なグループで仕事をすることは、均質なグループで仕事をする場合よりも困難を伴うことがあるのは間違いない。誤解や衝突を招く機会は増える。個人的、職業的、そして社会的な緊張が高まっている時はなおさらだ。

 しかし、筆者らの経験が物語るように、意図的なリーダーシップとチームワークがあれば、こうしたハードルは容易に乗り越えることができる。筆者らがこの1年半に学んだ教訓をいくつか紹介しよう。