これからの人事に必要なのは
エンプロイサクセスである

 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい始めた2020年2月から、セールスフォース・ドットコムでは新たな人事施策を次々と導入した。グローバルでは在宅勤務への転換を皮切りに、自宅の仕事環境を整備するために計500ドルを支給し、日本ではその他光熱費などの補助を目的にさらに月額5000円の支援をした。子どものケアが必要な社員のためには、看護休暇の規則を拡充し、臨時制度として月最大5万円の育児給付金も支払った。子どもを持つ親だけが困っているわけではないとわかると、高齢者の親や祖父母の介護も給付対象にした。

 社員の不安に寄り添うため、リーダーと対話できるオンライン会議を定期的に実施し、コロナ関連の情報は一元化して日次で更新した。メンタルケアやマインドフルネスなど専門家を招いたウェブセミナーも日々、開いてきた。

 これらの対策は、人事主導で実現したものばかりではない。むしろ、保育園・学校に子どもを預けられない社員や「よく眠れない」と悩む社員たちの切実な声を拾って生まれたものである。