●複数の解釈を促す

 それが驚くようなデータであるほど、他のメンバーにもその意味を可能な限り、多面的に解釈してもらうことが重要である。特定のチームダイナミクスが働く理由について、それぞれの考えを話してもらおう。

 人が最初に行う解釈――およびそれに基づく行動――は、組織内での自分の立ち位置や特定の役割に応じて規定された、狭い視野に基づいている。たとえば、エンジニアに何度も発言を遮られた製造チームは、次のようなさまざまな解釈をしていることが考えられる。

・エンジニアは、自分たちの作業成果物の納品が遅れたことで身構えている。
・エンジニアは、組織内で上位の階層にいることから、他の人たちの行動を妨げてもよいと考えている。
・エンジニアリングチームは、最近起きたブレークスルーを製造チームに伝えようとしている。
・前回遅れが生じた時、他部門にも責任があったにもかかわらず、エンジニアリング部門が非難された。
・エンジニアは、裏付けとなるデータを提供することで製造部門をサポートしようとしている。

 人が集まることで、単一の解釈に潜む誤解や対立が頻出することがよくある。そのような状況には、「私たち vs 彼ら」という構図と、自分たちは不当に悪く思われる側だという意識が存在する場合が多い。

 同僚の解釈を聞けば、彼らが悪意ではなく、まったく異なる――自分たちの思い込みと同じくらいもっともな――思い込みを持っていることが理解できるだろう。異なる認識を表に出すことは、根本的な問題に対する全員の理解を深める。そして、いっそう総合的な診断を下せるようになり、ますます盤石な解決策を設計できるようになる。

 ●現状を打破する

 チームが既定の振る舞いに気づき、そのような行動を引き起こすさまざまな理由を共有すれば、自分の言動がどのように受け止められているかを全員が感じ取れるようになる。その新しい知識を活用して、慣れ親しんだパターンを打開しよう。

 たとえば、筆者が運営していたCレベルの経営幹部向けオフサイトでは、製品責任者のラウルが常に最初に発言していた。その結果、CTOの声が小さくなり、CFOがラウルと議論を交わして本題から外れるケースが増えていた。

 筆者がこのパターンを指摘すると、ラウルは2人以上発言するまで黙っていることを約束した。当初は、他のメンバーの参加が増え始めた。そこに論議を呼ぶような質問がなされると、沈黙が続いた。グループは既定の行動、すなわちラウルの意見に従うという最初のルールに戻っていた。

 ところがラウルは、最初に発言するのは控えると決めていたため、実際に発言を控えた。やがて、COOから斬新なアイデアが出され、チームが沸いた。データやパターンを読み解くことで、既定の行動をリセットし、機能不全を緩和して、メンバーの貢献を向上させるのだ。

 チームダイナミクスを変える必要がある場合も、業績を上げるために従来のアイデアを打開する必要がある場合も、チームの行動パターンから脱却することこそ、画期的なアイデアや新たな機会を生み出すために必要なのかもしれない。


"How to Foster Healthy Disagreement in Your Meetings," HBR.org, November 09, 2021.