まず、自分の機嫌がよい時に取り組むことだ。2016年に実施された研究によれば、人は気分が悪い時には難しいことをやろうとしないが、気分がよい時には最終的に日常をよりよいものに変える、困難だが必要不可欠なタスクに取り組む傾向があるという。

 そのようなマインドセットを持つためには、「認知的再評価」(リアプレイザル)と呼ばれる方法で、タスクに対する見方を脳の中で転換することが有効だ。認知的再評価は、自分が求める状態を1つのシンプルな言葉やフレーズで表すことで、驚くほどの効果を発揮する。たとえば、「この新しいプロセスを紙に書き出したら、気持ちがすっきりするはずだ」と文字通り自分に言い聞かせるだけで、脳は非生産的なループから抜け出せる場合があるのだ。

 次に、脳に適度な自律性を与えることが必要だ。選択肢があると、脳は楽なほうを選びたがる。しかし、自分が革新的であろうと努め、みずからにインセンティブを与えることで、その反応を緩和することができる。

 たとえば、昼食にヘルシーな食事を選ぶかどうかを悩む代わりに、このように自問しよう。「自分は、この新鮮なサラダを食べて元気を出したいのか、それともこのドーナツを食べて前回のように気持ち悪くなり、眠くなりたいのか」。仕事でも同じことができる。「自分は、試しに来週から新しいプロジェクト管理ツールを使って、チームの負担を減らしたいのか、それとも前の社員が作成した、誰もよいとは思っていないスプレッドシートを使い続けたいのか」

 最後に、成長マインドセットを身につけて、自分が古い考え方や行動に戻ろうとした時にそれに気づけたら、人は困難なことでも成し遂げられる。新しい習慣を定着させたり、それを阻害するパターンやシステムに立ち向かったりするためには、他人の力を借りるのが効果的だ。

 そのための1つの方法として、挑戦することが結果と同じくらい評価される場面で、何かを試みたストーリーを共有しよう。たとえば、ある経営幹部のチームは、最高の仕事を成し遂げるために午前中は会議を禁止することにした。すると、それが奏功した人もいれば、午後のほうが沈思できる人もいた。実験開始から1カ月、チームは互いの時間の使い方の違いから、その方法ではうまくいかないと判断し、月曜日の午前中だけミーティングを禁止するという別の方法に切り替えた。チームは単純に以前の方法に戻るのではなく、「新しい習慣を試したことで前進できた」と認めることで、実験を続けられたのだ。

 不快に感じることを行ったり、困難な仕事を好んだりするのは、直感に反しているように思えるかもしれない。しかし、感覚ではなく、脳で何が起きているかを理解すると、恐怖心や不安をうまくコントロールし、困難なことを達成するために努力できるようになる。


"How to Convince Yourself to Do Hard Things," HBR.org, December 07, 2021.