Illustration by Joi Fulton

貴重な人材を確保・維持し、組織の生産性を向上させるために、インクルーシブリーダーシップの実践が求められている。ただし、インクルーシブな職場づくりに貢献できるのは、リーダーだけではない。筆者らは、同僚のちょっとした行動が包摂性につながり、仕事のパフォーマンスとチームの有効性を高めることを明らかにした。本稿では、そのような3つの行動を紹介し、職場にもたらす影響を示す。


 以前から注目を浴びるインクルーシブ(包摂的)な職場づくりは、人材の確保と維持、さらには生産性の向上を目指す企業にとって、ますます重要になっている。

 企業はこれまで、組織的なダイバーシティの方針策定を重視してきた。しかし、最近はインクルーシブリーダーシップに焦点が当てられるようになり、リーダーは方向性を示し、インクルーシブな行動の模範となって、人々に責任を求めるという強力な役割を担っている。これらの戦略はいずれも重要だが、同僚との関係の重要性を見落としている。

 それも無理はない。学術文献でも業界の実践でも、インクルージョンは個人対グループの心理的・社会的経験として概念化されている。つまり、グループ(またはグループを代表するリーダー)だけが、個人を公平に扱い、評価し、尊重して、つながりを築く力を持っているということだ。しかし、本当にそうなのだろうか。

 筆者はこの3年間、同僚との関係が、個人のインクルージョンの経験に与える影響を調べてきた。最初の研究では、あるグローバル企業のさまざまなプロジェクトチームで働く多様な従業員21人に、深く掘り下げたインタビューを行った。

 続いてエスノグラフィック調査を行い、(さまざまな国籍、技術力、ジェンダーのメンバーで構成された)プロジェクトチームの定例会議を2カ月観察して、同僚同士でインクルーシブな行為が表れるかどうか(どのように表れるか)を調べた。

 言い換えれば、顕微鏡で個人の詳細な経験をじっくり観察してから、ズームアウトして視界を広げ、インクルージョン/エクスクルージョンの小さな行為と、個人の仕事のパフォーマンスと、チームの有効性との関係を解明した。その結果、次のようなことがわかった。