●パーパスを持って生きる

 個人の「パーパスステートメント」は、具体性にあふれ、魅力的ではあるが、見せかけの適合率に根ざしていることが多い。個人のパーパスは一般的なスローガンになりがちで、刺激的ではあるが、実際的な指針になることはほとんどない。

「コンサルタントとして独立したい」という範囲が狭く限られた目標(会社の束縛から解放されたい、自分の運命は自分で決めたいという願望から生まれることが多い)、あるいは「人がよりよい人生を送れるように手助けしたい」という広く漠然とした目標(何年も退屈な仕事を虚しく続けた後によく見られる願望から生まれることが多い)を目指すのではなく、毎日より多くのパーパスを持って生きることを考える。

 たとえば、自分の時間を自分でよりコントロールしたい人は、自分のための時間、すなわち将来のキャリア選択について考えたり、セルフケアをしたり、友人といま以上に過ごしたりする時間を確保するために、どのような習慣を日常に組み込めるだろうか。人の役に立つことに生きがいを感じるなら、定期的にボランティア活動をする、あるいは若手のメンター役を引き受けることを検討してもよいだろう。

 パーパスを持って生きるということは、一定の価値観に従って日々の選択を行い、その価値観に基づき、他の選択肢ではなく、意図して特定の選択肢を選ぶということだ。何らかのパーパスを貫こうとするのではなく、パーパスを持ちながら生きる方法を身につけよう。

 これはキャリアチェンジを目指しているかどうかにかかわらず、実践できることだ。キャリアチェンジを検討しているならば、より多くのパーパスを持ちながら転職活動を行うことで、最終的な選択肢の質を高めることができるだろう。

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 たしかに、キャリアの移行期間に気が滅入ることもある。選べるものなら、誰しも先の見えない霧の中に足を踏み入れるのではなく、確実なものを選択したいと思うだろう。しかし、それが見つかるまでは何度も同じことを繰り返す必要があり、時には一筋縄でいかないこともある。

 不安を鎮めようと、うわべだけの確実性を求めれば、諺でいう「小難を逃れて大難に陥る」状況に陥り、後になってからより不快な思いをすることになりかねない。「いまは知りようのないことでも、知ろうとしなければならない」という不要な義務感から自分を解放しよう。

 キャリアの次の章に進むことは、できる限り慎重に時間をかけて、細心の注意を払うべき一大事である。不確実性に抗わず、受け入れよう。まるで埋もれた宝物のように、そこには可能性につながる手がかりがあるはずだ。その手がかりを見つければ、性急に事を運ばなくてよかったと思えるだろう。


"The Upside of Feeling Uncertain About Your Career," HBR.org, January 04, 2022.