●未知なる世界に可能性を見出す

 次は何をするかという問いの「答え」がなく、確信が持てない時のほうが、次なる可能性を見つけるためのよい質問が生じるものだ。具体的な方向性(ライフコーチになりたい、獣医になるなど)を固めていない分、一歩下がって、これまで考えたこともないようなキャリアパスに思いをめぐらすことができる。

 たとえば、経営幹部としてHR部門を率いるデボラは、新たな扉を開こうと模索していた。そこで次のキャリアに飛び込む前に、何通りもの可能性を探ることにした。情報を得るためにさまざまな人に話を聞き、海外を訪れて、自分が大切にしている信条に沿った仕事の「現場」を実際に見て回ったりもした。

 これまでのキャリアの中で最高の仕事ができたと思った瞬間や、最も満足感を覚えた瞬間はどのような時だったかを考えてみよう。これまでと環境が変わっても、どのような仕事であれば、そうした瞬間を得られるだろうか。

 たとえば、複雑なデータ分析が必要な財務の仕事をしていて、自分の洞察が画期的な解決策につながった瞬間を最高だと感じる人もいるだろう。金融以外の分野で、その優れた問題解決能力を発揮できる可能性はないかと、考えてみるのだ。

 ●正しいサインを読み取れるようになる

 慣れない高速道路を運転する時のように、周囲の状況がよくわからない時、人は警戒心を抱く。重要なのは、恐怖心ではなく好奇心を持って警戒することだ。

 キャリアに確信が持てないこと、それによって引き起こされる不安から、最適とは言えない選択をしている人があまりに多い。自分は時代遅れになっていないか、市場価値が下がっているのではないか、あるいは自分の価値を相手にうまく伝えられないかを恐れ、自分を安売りする。本当は冒険と呼べるような仕事をしたいと思っていたとしても、そのサインを無視して、たとえ満足できなくても慣れ親しんだ仕事に留まろうとするのだ。

 しかし、ケイトの例を考えてみてほしい。筆者であるカルッチのクライアントであり、マーケターとして実績を持つ経営幹部だ。

 古典的なマーケティングの仕事を20年以上続けて退屈を感じていたケイトは、勤務先が他社と合併するに伴い退職手当の支払いを提示され、受け入れた。退職から数週間のうちに、彼女はマーケターとしてシニアポジションのオファーを複数受け、その中には自分の到達点の役職だと常々考えていたCMOのオファーもあった。

 だが、カルッチには、彼女が本心ではそれを望んでいないことがわかっていた。

 ケイトの中で、不安から生じるサインがことごとく「安全な道を選べ」と告げていた。とはいえ、彼女が最も情熱を注いでいたのはクリエイティブな仕事、とりわけ人の創造性を引き出す教育に携わることだった。振り返ると、彼女がそれまで過ごしてきた場所、大好きだった仕事、発揮してきた影響力など、すべてのサインが別の方向を指し示していたのだ。

 そこで、彼女は試しに数ヵ月間、起業家を対象とした大学院の教育課程で創造性に関して教えることにした。その1年後には、地域の大学と提携し、起業家向けに創造性を専門に教えるセンターを設立するまでになった。