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経済社会が大きな変化を遂げるたび、新しいリーダーシップスタイルが求められるは当然のことだろう。しかし、伝統型のアプローチを置き換えれば済むほど、話は単純ではない。不確実性がますます高まる時代には、新興型のアプローチを絶対的な模範とするのではなく、伝統型と新興型のアプローチの間にある「7つの緊張関係」に着目し、それぞれの最適なバランスを見出すことが重要となる。


 変化が速く、予測不可能な世界に対応するには、リーダーシップに新たなアプローチが必要だと指摘されることが多い。昔ながらの指揮統制型のスタイルは時代遅れで、アジリティが高く、コラボレーション志向の強い新たなアプローチが不可欠だと考えられているのだ。

 しかし、今日のリーダーを取り巻く現実は「古きを捨て、新しきを取り入れよ」という言葉に集約できるほど単純ではない。たとえば、トップダウン型の意思決定や戦術遂行重視のアプローチをはじめとするリーダーシップスタイルは、ある側面では時代遅れに思えたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックがもたらした不確実性の中では極めて有効だった。

 それゆえ、今日の世界で有効なリーダーシップのあり方を考えるうえでは、新しいアプローチを絶対的な模範と位置付けるのではなく、古いアプローチと新しいアプローチの間の緊張関係という視点を持って考えるのがよい。筆者らの研究により、2つのアプローチの間には、7つの側面で緊張関係が存在することが明らかになっている。

 世界の1000人以上のマネジャーを対象に行った筆者らの研究結果を見る限り、本当に時代遅れなのは、リーダーが実際の事業環境を考慮することなく、ある決められたリーダーシップスタイルを採用すべきだという考え方だ。伝統型にせよ、新興型にせよ、単一のリーダーシップスタイルでは、今日のリーダーが直面している数々の課題に対処できない。

 したがってリーダーは、ある特定のリーダーシップスタイルの「型」を磨くことよりも、実践できるリーダーシップスタイルの「幅」を広げることが重要になる。言ってみれば、「スウィートスポット」を強化するのではなく、「スウィートレンジ」を拡充することが有効なのだ。その幅が広いほどリーダーシップの有効性と汎用性が高まる。

 自分のリーダーシップ能力の幅を広げるには、以下に挙げる3つの段階を経て行動することが欠かせない。