自分自身に耳を傾ける

 自分をコーチングするためには、みずからの行動に影響を与えている、自身の考えや信念に耳を傾けることに長けていることが必要だ。しかしながら、人は、雑念や不快感によって「心ここにあらず」の状態になることもあれば、取り組みやすいものに引っ張られてしまうこともある。注意散漫な時は、これまでとは違う考え方や行動をうながすような深い内省に至ることはできない。

 自分の心の声に耳を傾けられるようになるには、いくつかのテクニックがある。以下のように練習するのがよいだろう。

 ●摩擦抵抗を利用する

 人は誰しも、注意散漫になるものだ。セルフコーチングを習得しようとしている時に、それがいつ、どこで起きるのかを把握することは、自分で自分の足を引っ張らないためにも重要になる。せっかくのセルフコーチングの努力に水を差さないようにするには、自分と自分の集中の妨げになるものとの間の摩擦抵抗を増やす方法を見つけることが助けになる。

 たとえば、テクノロジーが集中の妨げになっている場合には、デバイスを別の部屋に置いておくことで、摩擦抵抗を増やすことができる。また、周囲にいる誰かのせいで集中できないという人はカフェで、あるいは仕事が始まる前で余裕がある時間にセルフコーチングを行ってみるとよいだろう。

 ●自分が自分の親友になる

 自分で自分をコーチングするということは、頭の中の「誰」に耳を傾けるべきかを判断できるようになることでもある。誰しも、自分の頭の中に「内なるコーチ」と「内なる批評家」が存在し、時折、内なる批評家が忍び出てきては支配権を握ろうとする。たとえば、「私には、これは難解すぎる」「私にはできないから、もう諦めたほうがよい」といった声だ。

 内なる批判家を鎮めるには、親友が自分に話しかけるように、自分で自分に話しかけてみる。その人物と会話している場面を想像し、相手が言ってくれる応援の言葉を3つ書き出そう。その人ならば、あなたが前に成功したことや、逆境を克服したことを思い出させてくれるだろう。あなたの決意や勇気を褒めてくれるかもしれない。内なる批評家が忍び出てきたら、その相手のことを思い出すのだ。

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 キャリアに不安を感じるのは珍しいことではないが、セルフコーチングとは誰もがみずからコントロールできる能力だ。セルフコーチングスキルの習得に励むことは、障害を乗り越える力になり、成長の機会もさらに広がるはずだ。

 2022年に、何か一つのスキルについて時間をかけて学び、練習し、向上させようと考えているならば、セルフコーチングがよい出発点になるだろう。


"How to Become Your Own Career Coach," HBR.org, January 13, 2022.