
新しい習慣を身につけるのは簡単ではない。スムーズに適応できることはほとんどなく、たいていはどこかの時点で挫折を味わう。そのため最初から完璧にやろうとせず、小さな失敗を積極的に経験することで、失敗に慣れることが重要だ。本稿では、それを実践するうえで有効な4つの戦略を紹介する。
新年の抱負に「今年は失敗の年にしよう!」と掲げる人は、まずいないだろう。しかし、実はよい目標だといえそうだ。
新しい習慣を身につけるには、まず上手に失敗することを学ぶ必要がある。社会学者のクリスティン・カーターは、「新しい習慣を身につけられるかどうかは、最初は失敗してかまわないと思えるかどうかにかかっている」と述べる。
あなたがどれほど頭脳明晰で、知識が豊富にあっても、新しい習慣(追い求めるだけの価値はある習慣)を身につける場合、最初のうちはぎこちなく感じるものだ。新しい習慣に瞬時に適応できる可能性よりも、挫折する可能性のほうが高い。人には失敗を本能的に避けたいと思う傾向があるため、私たちは失敗することを段階的に学んでいく必要があるのだ。
本稿では、筆者が顧客とのワークショップで提言している4つの戦略を紹介する。顧客の多くは、新たな目標を立てる時にこの4つの戦略を採用し、短期的ではなく、生涯にわたる長期的な成功を実現させるための戦略へと発展させている。
●落胆に対する免疫を高める
起業家のジア・ジアンには、新規取引を獲得して喜んだが一転、その取引がキャンセルとなった経験がある。拒絶を乗り越えることは起業家として不可欠なスキルだと頭ではわかっていたものの、ジアンは拒絶されることが何より嫌いだった。そこで、拒絶に対する免疫をつけようと考えた。
ジアンは、「ノー」と言われるであろう小さな実験を100日続けた。実験の内容は、知らない人に「お宅の裏庭でサッカーをさせてほしい」と頼むことから、テレビの生放送でインタビューを受けている最中に「天気予報のアナウンスをしたい」と頼むものまで、さまざまだった。
些細な失敗の経験を繰り返すことで、大きな落胆に対する免疫を高めることができる。パブリックスピーキングが好きではない。人前で話そうとすると声が震え、言葉に詰まり、自意識過剰がどんどんひどくなる。それならば、小さな実験から始めるといい。自分が1文だけ話しているところを録画し、その動画を見るのもよい。発言を求められていない会議で、1つだけ質問してみるのもいいだろう。
新しい目標に向かって小さなチャレンジをするのであれば、失敗しても大きなダメージを受けることは少ない(もしかしたら成功する可能性もある)。一歩進むごとに、新しい習慣を身につけるまでに生じるマイナス面への免疫が高まり、将来的に成功する可能性も高まるはずだ。
●逃げ出す前にコミットする
大きな目標を達成しようとする意気込みと、その先にある失敗への恐怖心は表裏一体である。目標を達成する第一歩として、戦略を策定したり、難しい会話をしたりするのは「今日ではない」と、自分に言い聞かせてしまうこともあるだろう。
しかし、目標を立ててから、自己防衛的な理由でそれを諦めてしまうまでの間には、絶好のタイミングが必ず存在する。このタイミングを逃さず、周囲を巻き込むようなコミットメントをしよう。
たとえば、率直な意見交換をしたい同僚に「計画の策定法について話し合いたいから、来週中に時間をつくってもらえないか」と頼むのもいいし、完成するのが非常に難しい成果物を納品する際に送るであろうメールのメッセージを、プロジェクトの着手前に作成するのもいいかもしれない。メールを書くことで、頭の中だけで考えていたことが、他者への説明責任に変わる。
みずからのコミットメントを外部に発信して他者に受け取ってもらったり、予定に組み込んでもらったりすると、撤回しづらくなるのだ。