●学びを共有する

「転んだことが重要なのではない。どうやって立ち上がったかが重要なのだ」という名言があるように、小さな失敗をして、その過程で何を学んだかを特定しよう。

 完璧な結果を得られなかった時は、どうしても人目を避けたくなるものだ(病欠を取って自宅にこもる人もいるだろう)。だが、学習のメリットを実感できれば、失敗した恥ずかしさを軽減できるはずだ。

 たとえば、筆者がともに仕事をしているある組織では「学んだ教訓」と名付けたデータベースを導入している。プロジェクトのマイルストーンを達成するごとに、チームメンバーは学んだことを振り返り、「教訓」のリポジトリに登録し、次のプロジェクトを担当するメンバーが、作業開始前に「教訓」を確認するのだ。

 個人レベルでは、各自が得た教訓をミーティングや文書でチームメンバーと共有したり、自身で復習したりすることもできる。加えて、新たに習得した技能を使ってみる時は、実験やベータ版、ドラフトといった名称を用いて暫定性を明示することで、学習者としての自覚をみずからにうながすことができる。

 そうすれば完璧である必要はなくなるため、より迅速に着手でき、有益なフィードバックや賛同を得られるだろう。

 ●進捗状況を把握して、適時に切り上げる

 インドア派の人がマラソンランナーを目指すための最良の方法は、走り損ねた朝に自分を責めることではない。自分を恥じたり責めたりすると、そのたびに継続しようというモチベーションが下がってしまう。

 そのため1日単位で評価するのではなく、経時的に進捗を評価することが大切だ。自分の努力を記録に残すことで、時間の経過とともに自分の進歩を実感できるようになる。また、新しい習慣が軌道に乗って楽しいと思えているうちに、作業を切り上げることも大切だ。

 パフォーマンスが低下する前に切り上げるには、時間制限を設けてピークを超えないようにしたり、過去の状態を記録して高揚感がいつ低下したかを確認したりしよう。そうすることで、自分自身のパフォーマンスが冴えないことにうんざりする代わりに、次回の挑戦を心待ちにできるようになるだろう。

 習慣を身につけるための野心的な目標や心構えを持っていても、十分な結果を出せないのではないかと不安になり、行き詰まってしまう人も多いのではないだろうか。小さな失敗を積極的に経験することで、持続的な変化にたどり着く道が切り拓かれる。失敗の代償が小さく、その見返りに大きな成功を手に入れることができるなら、新しい習慣を身につけるのはもっと簡単になる。


"To Build New Habits, Get Comfortable Failing," HBR.org, January 21, 2022.