
プレゼンテーションは聴衆と信頼関係を築く絶好の機会だ。当然、お粗末な発表をすれば信頼を損なうことになる。グループプレゼンテーションの場合、チームで一つの成果物をつくり上げる難しさが加わるため、いっそうの注意が必要だ。スライドのデザインが統一されていなかったり、発表者の引き継ぎがスムーズにいかなかったりすれば、聴衆の不安やストレスが増す。本稿では、グループプレゼンテーションでよく見られる3つの失敗と、それを防ぐための3つのベストプラクティスを紹介する。
お粗末なグループプレゼンテーションを経験したことがある人は少なくないだろう。プレゼンをする側は、前日の夜まで、誰がどのパートを発表するかを慌ただしく相談する。プレゼンを受ける側は、発表者が互いの話を遮ったり、下手をすると、聴衆を無視してスライドを一字一句読み上げたりする発表を聞かされる。
グループプレゼンテーションは、多くの組織で日常的に実施されている。新規顧客にグループピッチを行うこともあれば、リーダーシップ育成プログラムの最後を飾る演習として、ビジネスユニットのトップに対してグループプレゼンテーションが行われることもある。チームが同じ場所に集まる必要のないバーチャル会議では、そのようなプレゼンをより簡単に実施できるようになった。
グループプレゼンテーションを効果的に行うには、その発表がパッチワークに見えないようにチームワークや調整作業が必要である。しかし、そのような準備を行う時間を十分に確保していない人が多い。
何が問題なのだろうか。あらゆるプレゼンの機会は、聴衆と信頼関係を築くチャンスだ。グループプレゼンテーションのまとまり具合は、クライアントにとって、その人たちと一緒に仕事をした場合の関係性を推し量る物差しになる。
支離滅裂でまとまりのないプレゼンを見せられたら、クライアントは共同でプロジェクトを行なった場合の成果を不安に思うだろう。また、プレゼン中にチームメンバーが別のメンバーをけなしていたら、自分たちはどう扱われるのだろうかと考えてしまうだろう。プレゼンからは、組織のケイパビリティだけでなく、仕事相手との関係性も垣間見えるのだ。
筆者と同僚はコーチとして、20年近くにわたり、クライアントのグループプレゼンテーションを指導してきた。また、ハーバード・ケネディスクールにおいて、説得力のあるコミュニケーションをテーマにした経営幹部向けコースで講師を務めている。この3週間のコースでは、その締めくくりとして、参加者にグループプレゼンテーションを実施してもらい、筆者ら講師陣が評価を行っている。
その経験をもとに、グループプレゼンテーションでよく見られる失敗と、それを防ぐためのベストプラクティスを紹介したい。
よくある3つの失敗
(1)それぞれのスライドを別の人がデザインしたように見える
プレゼンのまとめ役がいない場合、スライドごとにフォント、テキストスタイル、画像などがばらばらになりがちだ。また、発表内容をすべてスライドに記載し、一字一句読み上げる人もいる。これでは聴衆は集中できず、注意が散漫になる。
(2)プレゼンター同士で話を遮る
誰が何を担当するのか――そして次の発表者にどのように引き継ぐのか――を事前に決めておかなければ、互いの話に割って入る形となるので、プロフェッショナルに見えない。筆者のあるクライアントは、このように言っていた。「私たちが互いの話を遮ることを、クライアントはどう思っているのでしょうか」
(3)人前にいることを忘れてしまう
グループプレゼンテーションで自身のパートを終えた人は、自分の発表が終わったことに安堵して、まだ壇上にいることやカメラに映っていることを忘れてしまう。携帯電話をチェックしたり、ぼんやりしたりして、次の発表者の話を熱心に聞いていない。
幸いなことに、きちんと準備をすることで、これらの失敗を防ぐことができる。