●自分が安心できるスペースを自分の中につくる

 自分が安心感を抱いたり、安全だと感じられたりする人や場所、動物、活動について考える。子どもはよく、お気に入りのぬいぐるみやブランケットを肌身離さず持ち歩き、それらを通じて安心感を得ている。大人も(その内なる永遠の脆弱な子どもも)、いつでも心の支えになってくれるものがあると安心だ。

 最近、あるクライアントが次のように話してくれた。「大学時代からの仲間がいるのですが、自分が困難な状況にある時は、その仲間のことを頭に思い浮かべるようにしています。私を守ってくれる民警団のような存在で、そばにいると思うと安心できるのです」

 ●楽しいと思えることを再開し、楽しみのためだけに行う

 筆者は大学時代、社交ダンスの魅力に取りつかれた。20代の間は続けていたが、その後は何十年も離れていた。60代になってから再開し、社交ダンスを始めた時と同じように、その魅力に取りつかれている。踊っている時は、意識が頭から離れて身体に向くため、気分が高揚しないことはほとんどない。

 あたなにも、好きでやっていたが、やめてしまったことはないだろうか。週に少なくとも1時間か2時間、エネルギーを取り戻すために、再び生活に取り入れられるものを見つけよう。

 ●誰かの人生をよりよいものにする

 人は誰しも、他者から存在を認められ、大切にされたいと願っているが、それをやってもらえる保証はない。しかし、他者の存在を認め、大切にすることならば、いつでもできる。相手からするとそれは贈り物であり、自分自身の自己肯定感もほぼ必ずと言っていいほど高まる。広く深く他人を思いやる時が、自分に最も満足できる時なのだ。

 人間は、他者からありのままの自分を認められたいと渇望するものだ。だからこそ、思いやりや共感は、自己調整と癒しの両方をもたらす強力な源泉になる。

* * *

 いかなる感情であれ、自分が抱いている感情を自覚し、それを受け入れるほど、あなたが望む自分に冷静かつ意識的に近づけるようになる。

 まず、本稿で紹介した行動のいずれかを日常に取り入れよう。1日のうちの決まった時間に行うように心がけると、強い意志を持って意識的に取り組もうとしなくても、自然に実践できるようになる。終わりの見えない不確実性やストレスの中で、自己調整能力は誰もが持ち、内側から働きかけることのできる力なのだ。


"What to Do When You're Stuck in the Survival Zone," HBR.org, January 24, 2022.