(1)従業員一人ひとりと話をする

 従業員がどのように感じているか、また彼らのネットワークの中で誰が影響を受けているかを、推測するのは不可能だ。直属の部下に個別に話を聞き、誰が影響を受けているかを把握しよう。必要なものはないか、自分がサポートできることはないか、尋ねてみるのだ。

 1対1の面談の冒頭で「ニュースを見ていますか。誰か影響を受けた人はいますか」という簡単な質問をすれば、多くの人が気づいていなかった思いがけないつながりが見えてくることがある。

 エグゼクティブコーチのサラ・ノル・ウィルソンによる『ハーバード・ビジネス・レビュー』の最近の論考には、感情を伴う会話を交わす方法について、有益なアドバイスが書かれている。「時には、自分が何を必要としているのかわからない、怖くて言い出せない、そもそもどのような選択肢があるのかわからないという人もいる。」「そのような場合には、『○○をしたら助けになりますか』と尋ねるのがよいだろう。相手に対して具体的な支援方法を示すことで、助けを得ることに『はい』と言いやすくなる」

(2)ミーティングの中で話をする場を設ける

 公立学校の校長たちに、ワークショップを行ったことがある。校長たちは、次年度の予算が拡大されるどころか削減されるというニュースを、数時間前に受けたばかりだった。控えめに言って、彼らはひどく取り乱していた。

 チームメンバーの心に重くのしかかっている出来事があれば、その問題に対処しない限り、効果的なミーティングはできない。時には、ニュースの内容を受け止めて、チームがその問題について話し合いたいと思っているなら、議論ができるような場をつくることから始める必要がある。誰もが見て見ぬふりをしている事柄の存在を認めることで、緊張が解け、仕事に再び集中できるようになる。

 その際の目的は、思いやりと理解を示すことであり、政治論議を始めたり、誰かを質問攻めにして困らせたり、発言を強要したりすることではない。週の定例ミーティングを、次のように始めるとよいだろう。「いま起きていることに触れる時間を少しください。私はその出来事が気になり、集中して仕事ができずにいます。同じように感じている人はいませんか」

(3)従業員に行動を起こす機会を与える

 危機に直面した時、多くの人は無力感を覚える。しかし、個人が集団に変化をもたらす方法もある。

 組織の価値観に合った支援方法を研究し、従業員が関わることのできる信頼性の高い情報源を提供しよう。また、従業員がどのような団体を支援しているか聞き、勤務時間の一部をボランティア活動に充てられるようにしよう。従業員が寄付をした場合、多くの組織が彼らの寄付金額と同額を特定の団体に寄付するマッチングを行っている。この取り組みは従業員を支援すると同時に、団体の活動支援にもつながる。

 選択肢の多さに圧倒されたり、身動きが取れなくなったりしがちだが、小さな一歩を踏み出し、そこから前に進もう。筆者の好きな言葉に、アッシジの聖フランチェスコによる言葉がある。「必要なことから始めて、それからできることをやれば、いつの間にか不可能なことも行っているだろう」

 武力紛争であれ、社会不安であれ、自然災害であれ、地政学的な問題がなくなることはない。リーダーやマネジャーとして、そのような問題をコントロールしたり、解決したりすることはできないが、それらがチームに影響を及ぼしているという事実を認めることはできる。

 危機が訪れる前に、風通しがよく議論のしやすい文化を確立しておけば、台風の目に突入した時、自分たちを支える土台となってくれるはずだ。


"How to Talk to Your Team About Distressing News Events," March 07, 2022.