
リーダーとして従業員の感情的ウェルビーイングを支援することは、コロナ禍でますます重要になった。しかし、心の痛みや感情の問題を抱えていると明かされた時、適切に対応できないリーダーがあまりに多い。よかれと思って発した言葉が、相手を余計に苦しめることさえある。本稿では、そのような状況が訪れた際、的確に支援するための6つの方法を紹介する。
過去2年間、感情的緊張(エモーショナルテンション)が積み重なったことで、マネジャーは従業員の感情的ウェルビーイングを満たしたり、支援を行ったりすることに焦点を移す必要があると、ますます明らかになっている。
業務用のツールやリソースを提供するだけでは、もはやチームを機能させるには不十分であり、彼らが生きいきと働くために心理的安全性を創出する必要がある。すなわち、心地の悪い会話もできるようにする、ということだ。
誰かに心の痛みや感情の問題を打ち明けられた時、適切な言葉をかけるのは難しいものだ。たとえば、筆者らのクライアントの一人で、ITマネジャーのイーヴィー(仮名)は数年前、在宅勤務中に流産を経験した。上司のマイク(仮名)は違和感を覚え、彼女の様子を確認しようと電話をかけた。
嘘はつけないと思ったイーヴィーは、深呼吸をしてから、勇気を出してこう言った。「隠さずに話しますが、実は流産したばかりで、そのことですごく苦しんでいます(中略)精神的にも肉体的にも」。マイクはしばらく黙っていたが、ようやく「では(中略)あなたが必要だと思うことをしてください」と声に出すと、すぐさま電話を切ってしまった。
マイクのその反応は、数年経ったいまでも、イーヴィーの心の中にわだかまりを残している。喪失感と苦痛の中で、自分はまったく支援されていないと感じたのだ。はたして、それは彼が意図したことなのだろうか。そうではなかったが、そのような影響をもたらしたのは事実だ。
従業員が直面している状況が自分にとってどれほど気まずいものであっても、その状況から逃げることなく、リーダーとしてどう向き合うべきかについて、時間をかけて学ぶことが欠かせない。チームメンバーが生きいきと働ける環境を整えることは、生産性を高め、イノベーションを成功させるうえでも必要だ。
米国の正規雇用の成人1500人を対象に調査を行ったケリー・グリーンウッド(マインド・シェア・パートナーズの創業者兼CEO)とジュリア・アナス(クアルトリクスのチーフピープルオフィサー)は、『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載された論考「職場のメンタルヘルスという喫緊の課題にどう対処すべきか」の中で、従業員のメンタルヘルスを支援する利点を概説している。以下は、その引用である。
会社にサポートされていると感じる労働者は、メンタルヘルスの症状を経験したり、能力を発揮できなかったり、仕事を休んだりする割合も低く、職場で自分のメンタルヘルスについて気軽に話せる傾向が強かった。加えて、職務満足度が高く、その会社に留まろうとする意欲も高いという結果が出ている。また、会社を信頼して、そこで働くことを誇りに思うなど、自社とリーダーをポジティブに評価していた。
筆者らは、2020年に行動制限が始まってまもなく、あるクライアントから次のような話を聞いた。リーダーから「調子はどうですか」と尋ねられることが増えたが、「大丈夫です」「苦しんでいます」「溺れかけています」といったさまざまな答えにどう反応すべきか、リーダー自身が明らかにわかっていないというのだ。
従業員の様子を確認することは重要な第一歩だが、彼らから伝えられた内容にどのように反応するかが、最終的な影響をもたらす。そこで重要になるのが、感情を支える言葉を用いることだ。