相手の感情を支える言葉

 従業員の感情を支えるリーダーとなるには、感情的知性(EI)が欠かせない。ウェルビーイングの専門家で、ワーキングウェル・デイリーの創業者兼CEOのファラ・ハリスは、EIの高いリーダーとは次のような人物だと説明してくれた。

「自分の中に現れる感情であれ、他者の中に現れる感情であれ、感情と相対することを苦にしない。そのような行動を通じて、チームメンバーは自分の存在や意見が認められていると感じ、帰属意識を高める」

 EIの高いリーダーは、誰かに苦しみを打ち明けられた時に、「ディタッチメント」(無関心)という盾の後ろに隠れたりはしない。自分の感情を制御し、相手もそうできるようにサポートすることができる。

 誰かに感情の問題やそれに伴う状況を打ち明けられた時に、相手をサポートするための6つの方法を以下に紹介しよう。

 ●相手の経験を肯定する

 肯定は、ただ相手の感情や状況を認めるだけでよい場合もある。たとえば、「それはたしかに疲労困憊しますね」といった具合だ。特にメンタルヘルスの問題を抱えている場合、人は孤独を感じ、心が折れそうになることもある。誰かの経験を肯定することは、単に「あなたのことを見ている」と言っているだけでなく、「あなたのことを信じる」と言っていることにもなり、困難な時の慰めになる。

 ●理解しようと努める

 チームメンバーが話をする機会がもっとほしいと思っているならば、その機会を提供する。そこでは、好奇心を持って話を聞くことが有効だ。たとえば、「そのことについて、もっと詳しく聞かせてください」と言おう。理解しようとすることで、相手を気にかけていること、サポートしたいと思っていること、そして詳しく知ることでもっと力になりたいという姿勢が伝わるはずだ。

 ●感情的・身体的なサポートを導く

 誰かが苦悩を抱えている場合、「いま、私にできる一番のサポートは何ですか」あるいは「いま、何が助けになりますか」と尋ねるのがよいだろう。感情が高ぶっている時は、自分にとって何が助けになるかについて考えをめぐらせたり、それを突き止めたりすることは難しい。これらの質問を投げかけることで、自分に何が必要かを本人が判断し、それに名前をつけられるようになる。

 ●具体的なサポートを申し出る

 時には、自分が何を必要としているのかわからない、怖くて言い出せない、そもそもどのような選択肢があるのかわからないという人もいる。そのような場合には、「○○をしたら助けになりますか」と尋ねるのがよいだろう。相手に対して具体的な支援方法を示すことで、助けを得ることに「はい」と言いやすくなる。

 ●解決策を提示するのではなく、視点を提供する

 たとえ、あなた自身にチームメンバーと同じような経験をしたことがあったとしても、「自分は理解している」あるいは「自分に効果があったのだから、相手にも効果がある」と思い込んではいけない。自分以外にも同じような経験をした人がいるとわかれば、安心にはつながるかもしれないが、その背景にある事情は人それぞれだ。

「自分は何が最善かを知っている」と思い込むと、相手のニーズを極小化し、会話が自分中心になり、相手は自分がサポートされていないと感じてしまう可能性がある。「私にも経験がある。あなたはこうすべきだ」と言うのではなく、「私が同じような状況に陥った時に役立ったことをお伝えしたら、助けになりますか」と聞いてみよう。

 ●相手の感情や状況を認め、感謝を表す

 自分に感情を打ち明けてくれたチームメンバーに、お礼の言葉を伝える。たとえば、「それは大変でしたね。何かあればいつでも言ってください。私を信用して、話してくれてありがとう」と伝える。それにより、あなたとチームメンバーの双方にとって、このような会話が重要であることが伝わり、今後の状況に対する安心感が強化されるはずだ。