相手の感情を支える実践例

 リーダーとして、相手の苦しみを和らげ、取り除く力になりたいと願う場面は多い。正直に言えば、チームメンバーだけでなく、自分自身の苦しみも取り除きたいと思うこともあるだろう。

 リーダーの仕事はチームメンバーを癒すことではなく、彼らが安心して感情を打ち明けられる状態をつくること、そしてできる限りのサポートを提供することだ。何を言ったらよいかわからなくてもかまわない。実際のところ、ただ相手の感情や状況を認めるだけでも、力になるのだ。

 2013年、筆者はパニック障害という診断を受けた。実際に、パニック発作を繰り返すようになっていた。当時は会社に入ったばかりで、この新たな試練を必死に隠そうとして、会議の前には涙の跡を素早く拭っていた。

 会社のCHRO(最高人事責任者)に呼び止められ、「調子はどうですか」と尋ねられた。少し間をおいて、もう一度「本当に調子はどうですか」と尋ねられた。必要ならば、すぐそこから逃げられるように、彼女のオフィスの扉の端に立ち、自分から話をすることに気兼ねし、唇を噛み締めていると、涙が溢れ出した。

 彼女は話を聞いて、筆者がどれだけ怖い思いをしていたかを理解してくれた。そして会社はどのような形であれ、筆者をサポートしてくれることを約束し、安心させてくれた。最後には、「話してくれてありがとう」と言ってくれた。何もかもが重荷に感じられていた時、思いがけず、職場は心が少し軽くなる場所となった。

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 コロナ禍や人種的不正義、分断、常態化する不確実性が新たな章に突入しようとする現在、あなたは重荷を増やすリーダーになりたいだろうか。それとも、重荷を少しでも軽くするリーダーになりたいだろうか。

 心地の悪い会話を進める方法を覚えることは、チームメンバーが生きいきと仕事をするための環境を整える一助になるはずだ。


"How Supportive Leaders Approach Emotional Conversations," HBR.org, March 01, 2022.