●自分は「何をやりたくないか」を決める

 私たちは、自分自身に大きなプレッシャーをかけて、将来の方向性を決めようとしがちだ。

 これは人間が本来、不確実性を嫌うようにできていることが一因だ。また、「あの人は自分が何をやっているのか、よくわかっていない」と周囲に思われ、立場を失うことへの恐れが原因になっていることもあるだろう。しかし、このようなプレッシャーがあることで、その内容を十分に検討せず、自分に合わない行動を選択してしまう可能性がある。

 筆者はクライアントに対して、それとは逆のアプローチを取るよう助言している。つまり、「自分がやりたくないこと」を明確にしたうえで、それを避けるステップを取るのだ。仮説で成り立つ未来を想像するよりも、自分が嫌だと思う物事を特定するほうが、ずっと簡単だ。

 たとえば、「マイクロマネジメントの上司の下では二度と働きたくない」と誓ったり、「いまの業界で働くのは、もう終わりにしたい」と思ったりしている人がいるかもしれない。「現場で手を動かす仕事はこれ以上やりたくない。アドバイザリー業務に集中したい」という人もいるだろう。

 このような情報は、自分が本当に何をやりたいのか、より現実的な青写真を描き出すうえで大いに役立つはずだ。そのためには「自分が嫌だと思うことを確実に避けるには、どのようにすればよいか」と自問するのがよい。その答えはきっと、あなたが望む方向へと導いてくれるだろう。

 ●暫定的な仮説を立てる

 すべてを一度にこなすのは不可能だとわかっていても、私たちはつい、多くの目標を立ててしまいがちだ。そうではなく自制心を保ち、自分が注力すべき領域に限定することが欠かせない。

 筆者が、著書Reinventing You(未訳)の中で紹介したエリザベスは、今後の可能性として6つの職業に関心を持っていた。とはいえ、そのすべてを経験するのは壮大な時間の浪費であり、いずれの仕事でも真っ当な進歩を遂げるのは難しいだろう。

 そうではなく、エリザベスは方法論的なアプローチを採用した。6つの仕事に関して、関係者に話を聞いて情報を集めたり、業界分析を読んだりすることで「データポイント」をまとめて、選択肢から除外する理由を探した。たとえば、ある職業では週末に働くことが必要となり、それが選択肢から排除する理由になるかもしれない。

 この手法を取ることで、エリザベスは将来有望な道筋を選択し、候補を少数に絞り込んだ。あなたも自分の選択肢を絞り込む方法(前述のように、やりたくないと思うことを基準にするのも一つの手だ)を考えたうえで、自分がキャリアを通してどこを目指しているのか「暫定的な仮説」を立て、1つの方向を選んでみよう。

 後になって、自分の考えが変わることもあるだろう。しかし、いずれの場合でも十分な情報に基づいて選択肢を選べば、妥当かつ説得力のある目標に向けて、戦略的に行動することができるはずだ。