●体を動かす

 睡眠と栄養という基本要素を整えたら、身体活動を取り入れることを考えてほしい。

 直観に反するようだが、運動はエネルギーを消耗させるのではなく、最終的に1日を通してエネルギーを供給する。そのうえ、気分や睡眠の質、集中力を向上させるというメリットもある。ADHD(注意欠如・多動性障害)を持つクライアントは、運動は1日を通して集中力を保つのに欠かせない要素だと言っていた。

 25分以上の強度の高い有酸素運動を最低週3回行うと、全体的なウェルネスが向上する。筆者は、「月、水、金の午前7時から7時30分まで、ジムでトレーニングする」というように、いつどこでその運動をするか具体的に定めることをお勧めする。

 なかなかモチベーションが上がらなければ、友人と一緒にトレーニングする、クラスに入る、トレーナーにつくなどしてサポートを求めよう。疲れてやる気が出ない時は、他人のエネルギーやモチベーションを借りるという手もある。

 最初からその強度の身体活動を行うのは大変だと思うなら、まず軽いストレッチやウォーキングから始めると、正しい方向に踏み出すことができる。「起床後に5分間、ストレッチをする」というように、運動を日課と結び付けると、習慣をライフスタイルに無理なく組み込むことができるだろう。

 ●新しい習慣を身につける

 健康的な習慣を取り入れて疲労が大幅に低減したら、別の新しい習慣を選び抜き、生活の中に織り込んでいくことができる。睡眠、栄養、運動という基本を大切したことで日中のエネルギーと集中力が向上し、ほかのことにも取り組める力がついているはずだ。

 ただし、過度の負担にならないよう、1度に1つだけ選んで取り組むことをお勧めする。たとえば、時間に遅れない、1週間の計画を立てる、プロジェクトを細かな作業に分解する、メールをためずにチェックするなど、取り入れたい習慣に的を絞るといいだろう。

 そして、少しずつ変化を起こしていくことだ。たとえば、時間に遅れないことを習慣にしたいなら、1種類のミーティングを選んで、必ず数分前に到着するよう努力する。それから徐々に、プロフェッショナルや個人として生活を送る中で、他の活動へと範囲を広げていく。

 習慣を変える時に大切なのは、特に疲れ切っている時はそうだが、ゆっくりと着実に進めることだ。前に進む一方で、自分にプレッシャーをかけすぎないよう常に心がける。

 たった1日で自分の習慣のすべてを変えることはできない。しかし時間をかけることで、エネルギーを回復し、疲労を回避して、持続的な成長と発展への弾みになるような、新しい習慣を確立することができるだろう。


"Building Healthy Habits When You're Truly Exhausted," HBR.org, April 01, 2022.