●まずは関係構築から始める

 新しい会社で働き始めた時の最優先事項は、関係構築である。長い間、同じ職場にいると、人間関係が成功に直接的な影響を及ぼしていたことに気づきにくいかもしれない。関係を築くと、信頼が形成される。周囲があなたの意思決定を信用するようになれば、より迅速に仕事を進めることができる。

 では、どうすれば速やかに関係を構築できるだろうか。

 第1に、周囲が「新参者」のあなたに興味を抱くのと同じぐらい、周囲とその仕事に興味を持つことである。それぞれの役割をよく知り、どうすれば自分が価値提供できるかを理解し、そのうえで変更を提案しよう。

 関係構築のプロセスは、同僚のニーズを理解することから始まる。あなたが先に関心を示してこそ、チームはあなたが加わったことを好ましく感じるのだ。

 第2に、このような会話をする時は、歴史を尊重する。昔からいる社員は、現在の土台を築いた人々だ。資金や人材、あるいは能力が不足しているがゆえに、旧式で時代遅れのシステムやプロセスを維持しているのかもしれない。長年の努力の積み重ねによってたどり着いた現行のやり方には、敬意を払う必要がある。

 そのうえで、その後の話し合いを通じて、未来のビジョンへの道筋を同僚と一緒に考えていく。この最初のステップを性急に行ってはいけない。対面かリモートかにもよるが、関係構築には数週間から数カ月、あるいは1年を要することさえある。

 ●会社の事業について徹底的に調べる

 入社時点では、面接に備えて読んだ資料以外、その会社についてそれほど多くを知らないだろう。新しい同僚は、あなたが自社の事業について何も知らないと思っている。まずは、会社とその企業文化について学ぶ時間を取ろう。

 ほとんどの会社のウェブサイトには、すべてのプレスリリースにリンクしたニュースルームがある。また、米国の株式公開企業であれば、米国証券取引委員会(SEC)への提出が義務付けられている年次報告書の10-Kや投資家情報を見てみよう。たいていの場合、企業活動の年次報告書が見つかるはずだ。

 会社はいかにして収益を上げているのか。どのようなプロダクトを販売しているのか。それは何に役立つプロダクトなのか。四半期目標や年間目標は何か。どのような指標で会社の成功を測定し、成長の裏付けとしているのか。今後3~5年間で、どの方向を目指すのか。これらの問いに対する答えは、あなたの仕事が組織全体の目標にどう関係するかを知るのに役立つだろう。

 また、企業文化を深く学ぶことも大切だ。この会社では、部署横断的な協働がどのように行われているのか。機敏で動きが速いタイプか、それとも慎重で動きが遅いタイプか。事業のスピードに影響を与えているのは何か。社員はどのような手段でコミュニケーションを取っているか。メールかチャットか、あるいはいつ電話をかけてよいのか。あらゆる階層の人があらゆる階層の人とコミュニケーションを取れるのか、あるいはヒエラルキーの壁があるのか。

 あなたがエントリーレベルの社員であれ、シニアエグゼクティブであれ、会社とその企業文化を知れば知るほど、より効果的な形で自分の仕事を会社の目標と一致させ、企業文化と調和した行動を取ることができるだろう。

 ●自分の仕事が、周囲からどのように認識されているかを理解する

 関係を構築し、会社について学ぶとともに、他の人々があなたの仕事をどう認識しているのか尋ねてみる。そうすることで、あなたに対して、またあなたの役割と全体的な機能について、周囲が何を期待しているのか理解することができる。前職と同じ肩書や役割の仕事であっても、仕事の中身はまったく違うこともあり、その役割で価値をもたらす方法が異なることもある。

 筆者が以前、ある会社で働き始めた時、筆者の役割に対する期待がステークホルダーによってまちまちであることに気づいた。筆者がどのような役割を果たし、スキルをどのように活かして組織に価値をもたらせるのかについて、何も考えていなかったリーダーすら存在した。

 そこで筆者は、すべてのステークホルダーの期待に応えるためには、まず自分の役割が何であり、また何をやらないかについて、全員の見解をすり合わせることに時間を割く必要があると悟ったのである。