筆者らの実験では、意識してマインドセットの変化を促したが、日々の生活には、時間利用に関する社会規範を思い出させるような、さりげない合図が至るところに存在する。それらは、仕事の捉え方に相当の影響を与えうるものだ。

 たとえば、長距離フライトの間にいくつかの仕事を片づけようと計画していたにもかかわらず、座席のスクリーンにさまざまな娯楽が映し出される様子を目にすれば、仕事に対するモチベーションが奪われてしまうだろう。

 同様に、金曜日に休みを取って楽しい時間を過ごし、代わりに日曜日を仕事に充てるつもりだったが、いざ日曜日になってカレンダーを見ると、自分は週末に仕事をしているのだと再認識させられ、モチベーションが著しく低下する。その結果、金曜日に働くよりもエンゲージメントが下がり、仕事が楽しくなくなるのだ。

 勤務時間に関する社会規範を思い出させるきっかけを認識し、あらかじめ対処することが欠かせない。つまり、非標準的時間に働くことに対するマインドセットを変えておくのだ。そうすることで、非標準的時間に働いていてもモチベーションを維持しやすくなる。

 フレキシブルワークは、現代の職場に大きな恩恵をもたらす。しかし、それによって内発的動機づけを損なうことがあってはならない。

 従業員が各々のモチベーションを見出し、仕事を楽しいと感じれば、これまで以上に仕事に励み高い成果を上げ創造性を発揮し親切で利他的な態度を取るようになる。また、ワークライフバランスが改善し、全体的なウェルビーイングが向上することもわかっている。

 モチベーションを失うことなく、フレキシブルワークの恩恵に浴したければ、あらかじめ自分のマインドセットを変える方法を探しておこう。それは、カレンダーアプリの表示をカスタマイズすることでも、自分の勤務時間を教えてくれるアプリをインストールすることでもかまわない。あるいは、単にフレキシブルワークの利点を再確認するだけでもよいだろう。

 このように適切なマインドセットを持つことで、自分が望むスケジュールで仕事に取り組むと同時に、仕事への愛情を抱くことができるはずだ。


"Research: Flexible Work Can Dampen Motivation," HBR.org, April 25, 2022.