この点を検証するために行った最初の実験では、フルタイム勤務の従業員を対象に、週末に働くことを想像してもらった。

 実験群の第1のグループには、友人と一緒にのんびり過ごしたり、音楽を聴いたりするなど、その時間を仕事以外の活動に投じた可能性を考えてもらった。一方、実験群の第2のグループには、週末に働いて仕事の遅れを取り戻すことができるという利点について考えてもらった。また、対照群である第3のグループには、特定のマインドセットを持つようには仕向けず、単にこの時間に働くことをどのように感じるのか考えてもらうに留めた。

 些細な違いに見えるかもしれないが、それぞれの違いが大きな影響をもたらした。週末に働くことの恩恵に意識を向けた第2のグループは、非標準的時間に働くのは特別なことではないと考え、その結果として、他の2つのグループに比べ、自分の仕事に対する関心とエンゲージメントが平均23%高かった。

 興味深いのは、対照群である第3のグループは週末に働くことの弊害に意識を向けさせたわけでないにもかかわらず、第1のグループと同様に、モチベーションが低下したことだ。ここから示唆されるのは、非標準的時間に働く時、仕事以外の活動に時間を投じたほうがよかったと考えるのは、人間として自然な特性だということだ。そうだとすれば、マインドセットを転換させるための介入措置がもたらす効果は見過ごせない。

 筆者らは、さらに別の実験を行い、実際の社会環境でこの介入措置がどのように効果を発揮するか検証した。大学の春休み中に、大学図書館で働く学生を対象にした実験である。

 一方のグループには、春休みを標準的な勤務時間だとリフレーミングするよう仕向けた。具体的には、春休みを利用して仕事を進めたり、成功させたりする人が多いことを意識させた。これに対して、もう一方のグループには、既存の社会規範を保持し続けるよう促した。つまり、春休みには楽しいことをしたり、リラックスしたり、くつろいだりする人が多いことを意識させたのである。

 そのうえで、図書館での仕事についてどう思うか尋ねたところ、仕事をやり遂げることに対する内発的動機づけは、前者のグループのほうが15%高いという結果が得られた。