D2Cブランドの
さまざまなサクセスストーリー

 エミリー・ワイスの個人ブログが10億ドルブランドになるとは、誰も思っていなかった。ファッション誌『ヴォーグ』などを掲げてグローバルに展開するメディア企業、コンデナストのアシスタントだった24歳のワイスは、「イントゥ・ザ・グロス」(Into the Gloss)というブログを趣味だと考えていた。それはミレニアル世代の仲間たちに美容に関する提言を行う場だった。2010年にスタートしたこのブログは、ハウツーものや日々の習慣、美容雑誌にありそうな情報を扱い、2014年には月間ページビューが1000万を超えていた。

 このブログを足がかりに、ワイスは消費者と直接取引するD2Cの美容製品ブランド、グロッシアーを立ち上げた。グロッシアーでは、提言とともに紹介した製品を宅配することにした。これにより、顧客がデパートの美容部員から助言を受け、売り場の製品を購入するという、伝統的な2段階の販売手法を崩壊させたのだ。キム・カーダシアンに支持され、製品の順番待ちリストが1万人以上になったグロッシアーは、年間売上高が1億ドルを超え、企業価値は10億ドルを上回っている。

 こうしたサクセスストーリーをきっかけに新しいD2Cブランドが次々に誕生した。『インク』誌によると、オールバーズ(靴や服)、キャスパー(寝具)、ダラー・シェーブ・クラブ(カミソリ)、ワービー・パーカー(眼鏡)などのユニコーン企業を含め、その数は2018年時点で400を超えており、それ以降も増加を続けている。