
多くの組織で、マイクロアグレッションと呼ばれる差別的行動に対処するための取り組みが行われているが、その多くが失敗に終わっている。とりわけ人種に関しては、そもそも白人側に「有色人種を差別しよう」という意図はなく、むしろ「よき理解者」を自認して、ネガティブな言動に気づいていないことが多い。リーダーは真の人種的公平を実現するために、黒人従業員がマイクロアグレッションを受けた時、組織にどのような影響があるかを十分理解しなくてはならない。本稿では、実験を通じて、特にマイクロアグレッションが起きた際のリアルタイムの影響を概説する。
ある調査によれば、対面での仕事に戻る準備ができていると回答した黒人のプロフェッショナルはわずか3%であるのに対して、白人のプロフェッショナルは21%だ。
両者の差を説明するための理由として、リモートワークによりマイクロアグレッションが緩和されていたことが挙げられる。マイクロアグレッションとは、たとえば有色人種に対して、人種を理由に軽蔑したり屈辱を与えたりするネガティブな言動を指す。そうしたコミュニケーションは意図的な場合もあれば、意図的でない場合もある。
人種的不平等に対する認識が高まる中、多くの組織が職場のマイクロアグレッションに対処しようとしているが、取り組みの多くは失敗に終わっている。
たとえば、黒人女性は依然として、屈辱的な発言をはじめとする無礼な扱いを受ける割合が最も高い。白人男性と白人女性の80%が職場で有色人種のアライ(理解者・支援者)であると自認しているにもかかわらず、実際には自らがこのようなネガティブな言動に関与している可能性があることを知ったら驚くだろう。
職場の同僚として有色人種にどう対応するかという考えと、現実の間にはギャップがある。人種的公平の実現に向けて前進するためには、一見すると「無害」に思えるコメントが、黒人従業員の職場での行動や感情に対して、リアルタイムでどのような影響を与えるかを、リーダーは理解しなくてはならない。
マイクロアグレッションに関する研究のほとんどは、過去の出来事に関する報告や説明に依存している。そのため「想起バイアス」の影響を受ける可能性がある。これは過去の出来事について、詳細を忘れたり省略したりする傾向だ。実験では、人々がその瞬間の出来事に対してどのように反応したかというデータを収集し、この問題を回避する。