マイクロアグレッションのリアルタイムの影響
実験結果からは、コンピテンシー・マイクロアグレッションに対する黒人労働者の反応は複雑であり、受け取る側だけでなく、チームの関わり方にも害を与えることが示されている。
実験群の被験者には、マイクロアグレッションを経験した直後、「怒り」「ショック」「恥ずかしさ」を感じたかどうかを数字で評価してもらった。マイクロアグレッションを経験した被験者は、対照群(パートナーからメッセージを受け取らなかった被験者)に比べて、強いネガティブ感情を抱いており、その差は著しいものだった。
とはいえ、彼らのパートナーに対する反応は、必ずしもネガティブ感情を反映したものではなかった。むしろ、対立を回避するようなコメントをパートナーに返す可能性が高かった。これは、黒人のプロフェッショナルのほとんどは、「怒る黒人」というネガティブなステレオタイプと結びつけられること、あるいは対人関係において一緒に仕事がしにくいと思われることを避けたがるという知見と一致する。
共通していたのは、ユーモアを利用することだ。ある参加者は「さあ、どうだろうね(笑)」と書いた。対立を回避する言葉を使わなかった少数派の人々は、相手に発言を明確にするよう求めるという探りのテクニックを使うか、相手の発言を「おもしろいと思わない」と直接表現した。
「その発言は人種差別的である」とパートナーに告げた被験者が2人しかいなかったことは興味深い。しかし、黒人は、人種差別的なやり取りに不快な思いをしても、自分の感情を抑制する傾向があるため、驚くことではない。
これらの結果から、黒人のプロフェッショナルは、他者が無害だと思っている発言に対処するために、日常的に多大な感情労働を強いられていることがわかる。
人種についてのやり取りに対応するために感情労働を行うことは、いまに始まったことではないが、今回の実験結果は、それがリアルタイムでどのように行われているかを明らかにしている。仕事をする際に不適切な形で人種が話題になると、黒人は多くの場合、自分自身、そして問題の当事者である相手のために、不快なやり取りを和らげる方法をすぐさま見つけなければならないというプレッシャーを感じるのだ。