(3)適切な感情をモデル化する

 感情は伝染しやすく、研究が示すところによると、デジタル空間ではいっそう増幅される可能性がある。チームの感情状態や雰囲気を管理することは、リーダーシップに不可欠な要素であり、絵文字はリーダーが特定の状況に適した感情的な手掛かりを表現し、ロールモデルとなるのに役立つ。

 ある世界的な消費財メーカーのシニアリーダーは、チームメンバーと同僚のやる気を高めるために、絵文字とGIFを活用していると説明する。「私は、自分のチームに活力を与え、前向きな雰囲気や行動を促すための『刺激剤』として絵文字を使っています」。彼はまた、オンラインチャットで行われていた財務上の厳しい議論に和みのひと時を与えるため、ユーモラスなGIFや絵文字を利用した最近の例を引き合いに出した。このデジタルの手掛かりがきっかけとなって、議論をより前向きな方向に進められたという。

 リーダーは、組織の情緒的文化に大きな影響を与えることができる。喜びやプライド、熱意、そして楽観といった前向きな職場の感情を表現した絵文字を活用することは、デジタルシグナルを効果的に活用したいときの第一歩となる。

 (4)企業文化を強化する

 組織は、従業員満足からバーンアウト(燃え尽き症候群)、財務実績に至るまで、すべてに影響を与える情緒的文化を持っている。絵文字は、日々のコミュニケーションの中にある情緒的文化を映し出し、強化することができる。

「わが社の企業文化は非常に楽しく、親しみやすい──ハグをたくさんします」と語るのは、世界的な家具販売業者のマネジャーだ。リモートワークに移行した後、同社のマネジャーたちは、みずからの文化のこうした側面を表現するため、新たな方法を見出さねばならなかった。「絵文字やGIFを送ることなしに終わる部門会議は1つもありません。それも大量に送り合うんです」と同社の社員は語った。活気にあふれる情緒的文化があるのなら、前述の社員がしたように、リーダーが必ずしも約束事を決めなくても、絵文字を自由に使うことができるだろう。

 また、他の職場では、リーダーが絵文字を使って組織のコアバリューを強化する文化もある。素材化学メーカーのデュポンの例を挙げよう。「私たちはお互いへの感謝や評価を示すことが好きなのです。私はよく、誰かの成果を評価するために拍手の絵文字を使っています」と、同社のグローバルブランドリーダー、ローリー・ゲッテルフィンガーは説明する。

 あらためて時間をつくって、あなたの組織の情緒的文化を評価してみよう。すでに、ミッションステートメントや価値基準、そして日々の行動指針の中に盛り込まれているかもしれない。そのうえで、それを強化するのに役立つ絵文字をはじめとするデジタルなジェスチャーは何なのか、検討しよう。

感情を害する失敗を最小限にする

 もしあなたが職場で絵文字を使うことに慣れず、躊躇しているなら、複雑な感情を表現する絵文字(たとえば泣き笑いの絵文字など)よりも、単純な絵文字(たとえばサムズアップなど)から始めることをお薦めする。そうすれば、絵文字で相手の感情を害する可能性が低下するからだ。

 感情を害するきっかけはたいてい、送った絵文字に対する誤解や、使った絵文字が予期せぬ意味を与えてしまうことから始まる。たとえば、合わせた手のひらの絵文字をマネジャーが送ったとしたら、これは感謝の意を伝えているのだろうか。または、頼み事をしているのだろうか。それとも、手を合わせて祈っているのだろうか。

 笑顔に両手を添えた絵文字は「ハロー」と親しげに手を振っているのか、それともハグをしていることを伝えたいのだろうか。もしわからなければ、その絵文字を使うことを避けて、シンプルで、いろいろな解釈がされにくい絵文字を使い続けるほうがよい。

 従業員は、オフィスのドアをくぐる前に、あるいはズームのミーティングルームに入る前に、自分の感情を封印したりはしない。しかし、バーチャル空間でチームを率いる場合、メンバーがどのような感情を抱いているのかを読み取ることは、いっそう困難になる可能性がある。絵文字の活用は、マネジャーと従業員をつなげ、組織の情緒的文化を強化するのに役立つのだ。

 

“Using Emojis to Connect with Your Team,” HBR.org, May 30, 2022.