「レイト・ナイト・アート」は、型破りだが非常に効果的なオンボーディングの一例だ。これは対面およびバーチャルのコラボレーション学習体験で、ライブパフォーマンスと音楽を使いながら、リスクテイクや、より深い会話、共同での問題解決などを組み合わせたトレーニングになっている。ヘッドスペース、サウスウエスト航空、アクセンチュアなどがこの研修を利用して、従業員が自分のコンフォートゾーンの外に出て、同僚と有意義に知り合えるように促している。

 バーチャルなオンボーディングを成功させるためには、人のつながりをデザインすることに注意を払う必要がある。若い従業員が孤独を感じて「社会的自己」が低下しているという憂慮すべきデータを踏まえて、企業は対面式のオンボーディングがもたらすメリットと、Z世代にとって強い第一印象が持ち得る大きな価値を考えなければならない。

 3. 若い才能をコーチングでサポートする

 グリントの「従業員ウェルビーイング・リポート2021年」は、学習と成長の機会があることを、優れた職場環境を定義する最も重要な要素に挙げている。学習と成長に不可欠なツールの一つは、組織の枠を超えたメンターシップとスポンサーシップで、次の世代を担う人材が個人的および専門的な成長と昇進の機会を確保できるようにする。

 物流プラットフォームのドアダッシュが開発した「エレベート」プログラムは、有色人種の女性のキャリアアクセラレーターとして成果を上げている。参加者は「フェロー」と呼ばれ、外部のエグゼクティブコーチとの1対1のコーチングセッション、キャリアに関するワークショップ、リーダーシップチームの会議への参加、経営幹部とのエグゼクティブ・スポンサーミーティングなどの活動を6カ月間経験する。プログラム終了後6カ月以内にフェローの38%が昇進を果たし、プログラムを経験していない同世代の従業員と比較すると昇進の割合は大きく伸びている。ゲイル・アレンとビー・アウェーの記事の通り、キャリアアクセラレーター・プログラムの成功は、シニアリーダーシップとマネジャーから本物の賛同を得られるかどうかにかかっている。

 もう一つ、若い人材をサポートする方法にピアコーチングがある。これは「同僚2人が互いに経験を振り返り、サポートして、スキルを高め、自分の仕事と目的意識を一致させるプロセス」だ。ピアコーチングのプラットフォームを提供するインペラティブによる、2022年の「ワークフォース・パーパス・インデックス」では、調査対象者の約半数(46%)が仕事上の友人をつくることが難しいと回答し、半数以上(57%)が上司が支えてくれないと回答している。

『strategy+business』に掲載されたWebMDヘルス・サービセズのピアコーチング・プログラムでは、150人の従業員が評価を受け、自分にとって何が強い目的意識につながるかを考えた。これらの結果をもとに、インペラティブが組織内で同じような目的意識を持つ人をマッチングさせた。ペアになった2人は2週間に1回、1時間のビデオ会議を行い、自分の経験やウェルビーイングについて深い話をした。

 インペラティブのデータによると、このようなプログラムの参加者の圧倒的多数(89%)が有意義なつながりを築いている。WebMDヘルス・サービセズの人的資源部門で責任者を務めるアンドレア・ヘロンとインペラティブのCEO兼共同設立者アーロン・ハーストによると、ピアコーチングは、参加者がペアの相手とピアコーチを超えた関係を構築し、チームのほかのメンバーや、自分のチームや部署以外の従業員との関係を築くために役立つような行動を促しているとのことだ。

 4. スクリーンタイムをコネクションタイムに変える

 サピエン・ラボズの報告書によると、パンデミック時代の「社会的自己」の低下は2010年からの傾向が加速したもので、スマートフォンの使用およびソーシャルメディアの増加と強い相関関係があることが、心理学者のジーン・トゥウェンジらの研究で示されている。

 これらの結果が示唆していることは憂慮すべきだ。今回のパンデミックにより、リモートワークやハイブリッドワークの必要性と支持が高まり、若い労働者(さらには、すべての年齢の労働者)にとって、より多くのスクリーンタイムが必要になっているからだ。しかし、Z世代の従業員の大多数(77%)が柔軟な勤務体制を望んでいる一方で、上司や同僚と物理的に近くないために、顔と顔を合わせるつながりが減って、メンターシップやキャリア開発の機会を逃していると感じている。

 柔軟な勤務体制と対面のつながりのバランスを取ろうという試みも進んでいる。たとえば、エアビーアンドビーは先頃、恒久的なリモートワークを認めた。従業員はどこに住んで、どこで仕事をしてもいいが(しかも給料は変わらない)、四半期に1週間程度、直接会う場を設ける。新規採用者のオンボーディングやチーム単位のリトリートなど、オフラインで直接集まることも非常に重要だ。

 月に1回、四半期に1回、あるいは年に1回、オフィスのスペースや遠方の土地で集まるチーム・リトリートでは、資料の共有や経営戦略の発表より、チームビルディングや人と人のつながりを深める活動を優先する。

 医療サービス企業のシグナによると、一緒にランチを食べたい同僚や親友が職場にいる人や、同僚と電話や直接会って話す機会が多い人は、「UCLA孤独感尺度」で孤独感が低い傾向がある。

 リーダーはメンバーにメールを送信したり、スラックでメッセージを送ったり、ズームミーティングの予約をするだけでなく、直接電話で話すことの力を忘れてはならない。可能な限り、同僚とコーヒーやランチをしたり、歩きながら話をする時間を見つけよう。毎週のチームミーティングの冒頭で5分間、ウェルビーイングをチェックしたうえで、メンバーの調子や何が必要かなどの話に耳を傾けることも効果が高い。

「仕事中に仕事から離れる」機会があると感じている従業員は、UCLA孤独感尺度で7ポイント孤独感が低い。もし迷ったら、従業員が画面に向かう時間を減らし、友人や家族、コミュニティと対面でつながる時間を増やせるような方法を考えてみよう。

 今日のような抗い難い状況で、若者を、さらには世代を超えた労働者を惹きつけて、維持し、エンゲージメントを高めるには、人と人とのつながりを第一に考えなければならない。

 

“Gen Z Employees Are Feeling Disconnected. Here’s How Employers Can Help,” HBR.org, June 13, 2022.