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部下のモチベーションを引き出し、パフォーマンスの向上につなげるにはどうすればよいか。自身のリーダーシップスタイルに悩むリーダーは少なくない。社会心理学の領域に目を向けると、各種データから明らかになっているのは、従業員との関係を優先し、積極性と思いやりを持って導くリーダーは、よりよい成果を生むということだ。相手を個人として認めることで、エンゲージメントが向上し、離職率は低下して、忠誠心と生産性が高まり、ひいては会社全体の利益となる。それらすべての土台となるのは、職場における健全な人間関係だ。本稿では、リーダーシップや対人関係に関する社会心理学の研究結果から、健全な人間関係がなぜ重要であるかを論じ、実際に職場の人間関係を改善するためにリーダーが実践すべき5つの基本原則を紹介する。

有能なリーダーは従業員のモチベーションをいかに引き出すのか

 クシャル・チョクシは、ウォール街で成功を収めたクオンツアナリストで、米同時多発テロ事件でツインタワーの2棟目が攻撃された時、ちょうどその建物に入ったところだった。ベストセラーとなった著書On a Wing and a Prayer(未訳)の中で語っているように、死に直面したことで彼は目が覚めた。9.11以前は富の獲得に力を注いでいたチョクシは、自身の仕事に対する姿勢に疑問を持ち始めた。