いつの時代も世代論というものは気になるものです。「あの世代は○○だ」という決め付けは受け入れやすく、思考や判断を楽にしてくれます。ですが、偏見に満ちた世代論を放置すると、チームの対立を招きます。『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』の最新号(2022年9月号)は「チームを成長させる『世代』の力」としてその対処法を明らかにします。
「タイパ」を重視する若者に困惑する世代
「タイパ」という言葉をご存じでしょうか。コストパフォーマンスの「コスパ」を連想させる、タイムパフォーマンスの略語です。
翻訳者の倉田幸信さんから、稲田豊史著『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書、2022年)を紹介されて以来、周囲でこのタイパ議論が盛り上がっています。
同書によると、タイパには「時間を無駄にしたくない」という若い世代の考え方が表れているといいます。
若い世代は、映像作品を視聴するにしても1.5倍速で流し、会話のないシーンを飛ばすのが当たり前。事前にネタバレサイトで結末を知ってから見るというのです。
私を含めたおじさん世代は、このことに違和感を拭えません。登場人物のしぐさや表情に気を払い、景色の描写や音楽を味わい、時にその沈黙を解釈してこそ、作品の醍醐味だと考えているからです。
はたして、若者は本当にタイパ志向なのでしょうか。
先日、都内の大学で講義をする機会があり、大学2年生に尋ねてみました。すると、タイパという言葉の浸透度合いは低かったものの、ほとんどの学生が共感を示していました。
ある学生は「1.5倍速どころか1.75倍速ですね。週に6、7本のドラマを見ています」と答えました。
さらに「4倍速にも挑戦しましたが、さすがに無理でした」と、はにかんでいました。映画館にいる時ですら「あ、なんで早送りできないのだろう」と感じてしまうそうです。
倍速視聴の習慣が広がった背景については同書に譲りますが、音楽も例外ではありません。
ある情報番組で、若い世代が楽曲の冒頭を飛ばすという「イントロ飛ばし」が紹介されていました。
1990年代を代表するB'zの名曲『LOVE PHANTOM』が取り上げられ、そのイントロ(約80秒)の是非をめぐり、「長いので飛ばしてよい」「イントロあってこそ」等と、SNS上で様々な意見が出ました。