
職場における性差別に立ち向かおうとする男性が増えている、しかし、本人は善意で声を上げたにもかかわらず、その言動自体が女性性に対するステレオタイプに基づいているため、むしろ差別を助長してしまうケースが珍しくない。このような「慈悲的性差別」を防ぐには、どうすればよいのか。本稿では、慈悲的性差別の裏側にある思い込みを明らかにしたうえで、適切な言動で介入するための6つの方法を紹介する。
ほとんどの人が、ジェンダー平等に配慮し、インクルーシブ(包摂的)な職場や社会の実現が大切だと考えている男性と働いている。あなたもそのような男性の一人かもしれない。
そうだとすれば、あなたは職場の性差別と戦う決意を持っているに違いない。また、性差別に立ち向かうことが、自分自身と社会の双方に恩恵をもたらすことを理解し、自分にはそれを達成する能力があると自信を持っているだろう。職場で性差別的な発言を耳にしたら、あなたは本能的に、発言者に直接意見して、発言の根底にある思い込みを問い質したり、異を唱えたりするはずだ。
ところが、筆者らが世界13カ国の男性ビジネスパーソン7210人を対象に調査を実施したら、前述のような男性たちは職場で性差別的な発言を耳にした時、「慈悲的性差別」を伴う対応をしがちだとわかった。援助や世辞や報酬のように、一見するとポジティブに見える態度、行為、行動が、職場の女性に対するサポートに水を差しているのだ。女性への支援、保護、称賛、慈しみを装っていることも多い。
慈悲的性差別も敵対的性差別も、男女のアイデンティティ、社会的役割、行動に関する伝統的なジェンダー規範やステレオタイプを補強する役割を果たす。敵対的性差別は、伝統的なジェンダーロールから逸脱した女性を罰することで、その役割を持続させる。一方、慈悲的性差別は、善意の行動を通じて同じことを行っている。
慈悲的性差別と敵対的性差別は、その戦術こそ異なるが、働く女性に同じような結果をもたらす。心身の健康に悪影響を与えたり、無力感を増幅させたり、キャリアサポートを減少させたりするのだ。
男性は職場における性差別に声を上げ続けるべきだ。ただし、その声は自分が思うような効果を発揮しないことがあると認識すべきなのだ。