これらのリスクはすべて、メンタリング関係やメンティの成長にマイナスの結果をもたらすおそれがある。たとえば、メンターが疲れていてキャリアの話をする気になれない(あるいは完全に消耗し、創造的な対応が難しいと感じている)場合、会話が注意散漫になるかもしれない。これに対してメンティは、メンターが無関心や無気力であるとか、自分の才能や可能性に問題があると誤解する可能性がある。

 メンターは、メンティにとって模範となる存在だ。燃え尽きたメンターは、セルフケアや自己認識について模範を示すことができないかもしれない。

 メンターの役割でエネルギーを消耗し続ければ、どれほど善意を持っていても、最終的にはメンタリングができなくなるか、誰の助けにもなれなくなる。メンターのバーンアウトを見極め、克服するための方法が以下である。

バーンアウトの兆候を知り、リスク要因を定期的に評価する

 定期的に振り返る時間を取ることで、メンタリングでのバーンアウトの兆候を早期に発見することができる。慢性的に疲れている、いつもより皮肉っぽい、無気力の兆候があるといったサインに注意する。信頼できる同僚に、いつも疲れている、気が散っている、押し潰されそうであるなど、自分について客観的に感じていることを聞き、メンティの成長を促すために必要な感情面で余力があるかを確認する。

 あなたが疲労や能力低下の兆候を示した時は、ケアフロンテーションの精神に基づき、率直に伝えてもらえるよう、同僚に依頼する。たとえば、同僚に定期的にチェックインをしてもらい、メンタリングの仕事量や仕事上の人間関係で抱えている悩みを確認してもらう。相手にも同じことを申し出るとよい。また、オンライン上のバーンアウト評価ツールを利用することもできる。

メンタリングに向ける労力を節約する

 質の高いメンタリング関係は、従来のように1対1の形式でしか生まれないと思い込むことをやめる。自分の時間を最大限に活用しながら、指導の幅を広げるメンタリングモデルを考えることだ。たとえば、新入社員のグループを作り、支援と指導ができるメンター数人と毎月面談できるようにする。新入社員はメンターから学び、そして新入社員同士も互いに学ぶことができる。

 ピアメンタリング(ほぼ対等な者同士の非公式な組み合わせ)を検討するのもよいだろう。また、他者にメンタリングの方法を教えることで、メンタリングの継承ができる。最後に、メンタリングの縮小が必要になった場合のバックアッププランを用意しておくと、自分自身をケアするように、メンティに対するケアもできる。

メンタリングを楽しいものにする

 米プロバスケットボール協会(NBA)で9回優勝し、ゴールデンステート・ウォリアーズのヘッドコーチを務めるスティーブ・カーは、筆者(ルース・ゴティアン)の著書The Success Factor(未訳)の中で、バスケットボールは常に楽しいものであってほしいと話しており、それが彼のコアバリューの一つでもある。そのためカーは、練習を楽しくし、チームが団結するよう、あらゆる努力をしている。

 あなたも「なぜ」に立ち返ろう。メンタリングが人生にもたらすインスピレーションと充足感を認める。メンタリングは価値観の一致を図る仕事であり、深い充足感をもたらす。エネルギーを消耗するだけでなく、エネルギーを生み出すものでもある。

 一緒に本を読んだり、カンファレンスに参加したり、メンティのためのネットワーキングのイベントを企画したり、互いにロール・シャドー(異なる組織に所属している場合はジョブ・シャドー)を行うことを検討しよう。

バーンアウトについて話す

 状況と現実、課題を認識する。自分自身の能力についてオープンになり、透明性を保ち、能力が低下した状態で仕事をすると(しばしば意図しない形で)どのような結果になるかをメンティと話し合う。

 たとえあなたがエネルギーを失った状態でメンタリングをしているとしても、透明性と脆弱さを示すことで非常に大きな影響を与えることができる。自分の不完全さを見せることは有益なのだ。

 同時に、メンティとの関係においては相対的な力関係があることを忘れてはいけない。あなたのバーンアウトに対してメンティが責任を感じるようなことは避けなくてはならない。自己認識とセルフケアの模範として戦略的に自己開示を行い、メンティがこれらの重要なスキルを習得できるようにしよう。

 誠実な会話は、あなたがミーティングの頻度を減らしたり、一定期間離れたりする必要がある場合に、メンティに状況を伝えることにもなる。

 リーダーは、組織のメンターの努力を認め、認識することで、支援が可能になる。

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 よいメンターでありながらバーンアウトを避けることは可能だ。優秀なメンターは、メンターシップが仕事でも私生活でも、最もやりがいのあることの一つだと理解している。メンターはメンタリング関係から多くのものを得る。しかし、メンタリングに伴うコストについて、誠実な議論がなされることはほとんどない。

 バーンアウトを防ぐカギは、今日の環境下でのメンタリングに伴う潜在的な課題を認識することだ。優れたメンターはメンティのすべてに目を向けるが、みずからのすべてにも目を向けなければならない。自分の感情的なウェルビーイング、余力、境界線について明確にし、メンティや同僚にそれをはっきりと伝える必要がある。

 自己認識と、透明性のある同僚との関わりの、両方に根ざしたモニタリングシステムを持たなければならない。言い換えれば、おのれを知り、そしてメンターとしての能力が低下し始めた時に、率直な意見をくれるほどにあなたを気にかけ、信頼してくれる親しい同僚のグループを構築することだ。


"Don't Let Mentoring Burn You Out," HBR.org, July 29, 2022.