ステップ2:「初めまして」から「またお会いしましたね」へ
初めての時は何でも緊張するもの。2度目のほうが絶対に簡単だ。初対面の人に「こんにちは」とあいさつしたのなら、すでに一番気詰まりな段階は乗り越えている。再び「こんにちは」と言うことを自分に許した、ということだ。次は、知り合いからアライ(味方)へと関係性を深める段階だ。
・PCの前に戻り、少し時間がある場合:次のような内容のメールを送ってみよう。「楽しい会話をありがとう。~という共通点がわかってよかった。また近いうちに会えるのを楽しみにしている。仕事でご一緒できたらなお嬉しい」
・相手とまた廊下で会った場合:笑顔で「またお会いしましたね」と声をかけ、続いて、前に話したことに何かしら触れよう。「結婚式はいかがでしたか」「プレゼンはうまくいきましたか」など、何でもかまわない。
・グループコールで一緒になった場合:「またお会いできて嬉しい」とチャットを送ったり、相手が言葉に詰まった時などに、励ましのプライベートメッセージを送ったりしよう。
・相手に関係しそうな情報を見つけた場合:「これを見た時、以前~について話されていたのを思い出したので」と書き添えて、そのウェブサイトやメール、ポッドキャスト、動画、記事、ホワイトペーパーなどを転送しよう。
・相手が興味を持ちそうな機会を見つけた場合:「このイベントに招待された時、あなたのことを考えました。ご興味があればチェックしてみてください」と言って教えてあげよう。
・協力すると良さそうな人がいる場合:紹介したい人がいることを伝えよう。「〇〇さんと面識はありますか。彼女も~なのです。よろしければ、先方も興味があるか聞いてみますよ」
ステップ3:「またお会いしましたね」から「話しませんか」へ
仕事で知り合った相手のほとんどは、知人止まりだろう。それは自然なことだ。しょせん、1日に使える時間は限られているし、1度にそれほど多くの人間関係を維持できるものでもない。だが、自分より数歩前を行く一握りの特別な人々に出会った時、私たちは彼らの失敗から学び、それを回避する機会を得ることができる。ここでは、アライをメンターに変える方法を4通り紹介しよう。
・セカンドオピニオンがほしい場合:相手から「意見」を求めるため「いま~に取り組んでいます。~について、~の専門家であるあなたの見解をお聞かせ願えませんか」と依頼する。
・方向性に迷っている場合:相手の「アドバイス」を求めるため「~をしようとしているのですが、~についてアドバイスをいただけると幸いです。少しお時間をいただけませんか」と説明する。
・相手と同じ道を歩みたいと考えている場合:相手の「経験談」を聞き出すため「~を踏まえて、あなたと同じ道を歩みたいと考えています。少しお話を聞かせていただけませんか。私の都合のよい時間は~です」などと切り出す。
・相手の興味や専門領域と重なるプロジェクトに取り組んでいる場合:相手の「参加」を求めるため「~の方向性を示してくださるアドバイザーを探すことになり、すぐにあなたの顔が浮かびました」と協力を求める。
ステップ4:「話しませんか」から「関係を築きませんか」へ
これから出会う人の中には、「メンター」になって助言を与えてくれる人もいれば、「スポンサー」になって扉を開いてくれる人もいるだろう。後者は、あなたを非公開の会議に招き、注目度の高いプロジェクトに引っ張りこみ、昇進さえ後押ししてくれる力を持っている人だ。
あなたやあなたのキャリアのために力を注いでくれそうな先輩に会う時には以下のような内容のコミュニケーションを取るとよい。
・まず、自分の「目指していること」を知ってもらおう。たとえばこう話す。「5年後の自分の求める居場所を考えた結果、あなたと同じように、~していたいと思いました。そうなるためには、何からやり始め、何をやめ、何をやり続けたらよいか、アドバイスをいただけませんか」
・次に、自分の「進捗状況」を共有しよう。たとえばこう伝える。「勤務評定がありましたが、あなたと話し合い、想定した通りの結果だったことをお伝えします。上司から~と言われました。次の四半期では、~を行うつもりです。状況を報告し、~のお礼を言いたかっただけですので、返信は不要です」
・その際に、自分の「悩み」もいくつか伝えよう。たとえばこう伝える。「~を振り返ってみて、~はもっとうまくやれたのではないかと感じています。この考え方は正しいでしょうか。あなたが私の立場だったら、何をどう改善しますか」
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筆者は、縫製工場で働いていたシングルマザーの移民の息子として、「地道に一生懸命働いていれば黙っていても伝わる」と常々言われていた。しかし、充実したキャリアを築く人と、なぜかつまずく人との違いを解き明かしたいま、別の見方を持つに至った。
会社という世界では、仕事をすることは仕事の一部でしかない。後は、人の目を引き、耳を傾けさせ、知ってもらうことことが重要である。そのどれもが強力な人間関係なしには不可能だ。
あなたが築くすべての人間関係が長期的なものになるわけではないが、少なくとも、一度人間関係を構築しておけば、次の会議では馴染みの顔になり、アイデアを出し合える相手となり、困った時には相談できる相手となる。次の出社を、単なる通勤以上のものにしよう。
"How to Build Real Relationships at Work," HBR.org,August, 19,2022.