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男女の賃金格差は何が原因で発生するのだろうか。筆者らはその原因の一つとして、予測不可能な勤務に対応できるか否かが影響していることを特定した。女性は仕事以外にも、子どもの送迎や介護等、責任ある対応を求められ、急な仕事の依頼に対応できないことが、賃金に反映されているという。この課題を解消するためには、いくつかの対処法がある。予測可能かつ管理可能なスケジュールは、生産性を高め、仕事と家庭の両立を助け、男女の賃金格差を減らし、すべての人にとってよりよい職場をつくることにつながる。

仕事以外に責任があり、急な残業に対応できない

 賃金の平等に向けた取り組みは大きな前進を遂げているが、2022年の女性の平均賃金は依然として男性より17%低い。この格差については、さまざまな説がある。女性が低賃金の職業を選んでいるのではないか。出産や介護で仕事を離れるため経験が少ないかもしれない。交渉や競争をみずから避けているのかもしれない。意図的または無意識のバイアスによって、マネジャーに見過ごされているのかもしれない。

 では、これらの要因をすべて取り除いたら、賃金格差はどうなるだろうか。

 この疑問を考えるために、我々は先述した要因が存在しないにもかかわらず、手取り収入が男性の100ドルに対して、女性は89ドルしかないという状況を分析した。注目したのはマサチューセッツ湾交通局(MBTA)のバスと電車の運転手の7年分の給与データだ。MBTAでは組合との契約により、管理職が性別にもとづくバイアスを交える余地がなく、従業員が交渉することもなく、客観的な構造によって賃金が決まる。すなわち、勤続年数に応じて時給が決まり、勤務スケジュールの選択や残業を引き受ける機会も年功序列で決まる。にもかかわらず、役職も年功序列もまったく同じ場合でも、手取り収入で11%の男女差があるのだ。

 この賃金格差をもたらす要因は何か。筆者たちの分析から、勤務スケジュールが予測不可能であり、従来の慣習に馴染まない、あるいは管理しにくいほど、結果として生じる男女格差が大きいことがわかった。一方で、スケジューリングの適切なアプローチが、賃金の平等と生産性の両方を高めることもわかった。

 賃金格差の大半は、女性が高齢の両親を医者に連れて行く、子どもを学校に迎えに行くなど、予測可能なスケジュールを必要とする仕事とは別の責任を引き受けている傾向が強いことから生じている。こうした柔軟性に欠けるコミットメントがあると、仕事のスケジュールが予測不可能で直前に決まる場合にシフトに入りづらくなり、残業(通常の賃金の1.5倍が支払われる)を引き受けられるかどうかの男女差につながる。当日や前日など間際に残業を提示されると、女性が引き受ける機会は男性より約50%少なかったが、3カ月前に残業をスケジュールに組み入れることができた場合は、それを引き受ける機会は、女性が男性より7%少ない程度に留まった。

 同様に、仕事以外のコミットメントがあるということは、女性は同じ立場の男性より通常の時間内の勤務が長くなり、週末や休日シフト、分割シフト(1日の勤務時間の途中に数時間、無給の休憩を挟むこと)に入れない場合が多くなる。実際、最初にスケジュールを選択できるオペレーターの中で、女性は男性よりこうした変形シフトを避けていた。