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パーパスの中心にあらゆるステークホルダーを据えることで、企業の戦略はどのような影響を受けるのか。筆者は、オーストラリアの主要企業を中心に2017年と最新の年次報告を比較して、パーパスの変更が戦略に与える影響を考察した。

あらゆるステークホルダーをパーパスの中心に据えることの意味

 企業戦略の策定を担うリーダーにとってカギとなる問いは「この会社の最終的なパーパスは何か」である。

 幸いにも、この問いに答えるための基本的なアプローチは、米国のビジネス・ラウンドテーブル(財界ロビー団体)によって明確に示されている。2019年8月に同団体は、アップルやウォルマートを含む企業のCEO181名の署名入りで、「企業のパーパスに関する声明」を発表した。この中で、企業は「顧客、従業員、サプライヤー、コミュニティ、株主」を含むすべての「ステークホルダー」の利益のために存在する、と述べられている。2021年に同団体はこの立場を再確認した

 企業の存在理由を表明するという概念は以前からあり、ユニリーバパタゴニアなどが採用してきたが、2019年のこの声明は小さな革命であった。この考え方がいまや主流になったことを示したからだ。

 また、この声明はラウンドテーブルの立場の転換を意味するものでもあった。彼らは従来、株主のニーズを満たすことを企業の第1のパーパスとしてきた。2007年から2008年の世界金融危機を受けて彼らが認識したのは、企業パーパスの焦点を特定の集団に絞ることはできず、自社のあらゆるステークホルダーのニーズを考慮しなければならないということだ。

 筆者の懸念は、あらゆるステークホルダーをパーパスの中心に据えることの影響を、多くの企業が十分に理解していないことである。

 たしかに、好ましい影響も多くある。たとえば、従業員のプライドやエンゲージメント、士気が高まることがKPMGの調査で示されている。これと同時に、ステークホルダーをパーパスの中心に据えることは、戦略策定のあり方にも重大な影響を及ぼす。企業には戦略を遂行する多大な責任が生じるのだ。

 このことは企業にどのように展開されるのだろうか。そして、あなた自身およびあなたの事業にとって、何を意味するのだろうか。