1922年10月、ハーバード・ビジネス・スクールの機関誌として『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)が誕生しました。その頃は世界恐慌の激動期を前に、束の間の繁栄を迎えていた時期でした。それから100年が経ち、パンデミックやウクライナ侵攻などを受け、世界は大きな岐路を迎えています。『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』の最新号(2022年11月号)は次のリーダー像を探るため、「これからの経営者の条件」と題した特集を組みました。
NPOの取り組みに学ぶ
共感の輪を広げる仕組み
商品パッケージやロゴに書かれた「C」の文字を消し、その画像をSNSに投稿すると、がん治療の研究開発につながる──。
2022年9月、そのようなキャンペーンが始まると、SNSのタイムラインはあっという間「#deleteC大作戦」で埋まり、16日間で約1.4万件の投稿を集めました。
企画したのは、「みんなの力でがんを治せる病気にする」というミッションを掲げた認定NPO法人deleteCです。食品・飲料メーカーやIT企業、地域の青年会議所など21の協賛企業・団体と連携し、がん(Cancer)の頭文字を消す投稿1件につき、100円分の研究開発支援につながるというプロジェクトを進めています。
なぜ共感の輪を広げることができたのでしょうか。関係者の方に尋ねると、そこには3つのポイントがありました。
まず、「誰でも気軽に参加できる仕組み」です。いくら社会貢献につながると説明されても、普通の人は「自分には難しくて何もできない」と遠ざけてしまうものです。
それに対して「身近なもののCを消す(隠す)」という、誰でもできる行動を先に促すことで、そのハードルを取り除きました。次に「お願いしない」ことです。通常、協賛企業を募集する際、主催者側は頭を下げて「お願い」をしてしまうものです。しかし、それでは上下関係が生まれ、熱が伝わりにくくなります。deleteCでは活動の説明に留め、担当者の反応をみて連携を進めました。共感から発展する関係性を大切にしたのです。
最後に「個人のWHYを大事にする」です。協賛企業の担当者を集めた会合のたびに、個人として「なぜ」この取り組みに参加するのか、その共有を行っています。すると、通常は協働しない企業同士ですら、驚くほどスムーズに関係構築が進んだといいます。
こうして、ミッションの持つ力が最大限に発揮され、共感の輪を広げられたのです(なお、deleteC自体は「協賛企業」ではなく、同じ参加者ということで「参加企業」と位置づけています)。