HBRが誕生して100年
これからのリーダー像とは
1922年10月、ハーバード・ビジネス・スクールの機関誌として『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)が誕生しました。第1次世界大戦とスペイン風邪の流行が終息し、その後訪れる世界恐慌の激動期を前に、経済や文化が急速に発展し、束の間の繁栄を迎えていた時期でした。
それから100年が経ち、世界は再び大きな岐路を迎えています。これからのリーダーにはどのような資質や能力が求められるのでしょうか。今号の特集「これからの経営者の条件」では、これからの時代を切り拓くリーダー像に迫ります。
特集1本目は、コーポレートガバナンスの研究者として活躍し、数多くの社外取締役も務めてきた成蹊学園の江川雅子学園長へのインタビューです。江川学園長は「いまこそ、リーダーは『人を束ねる力』を磨くべきである」と述べ、多様なステークホルダーに応えるための資質と能力を明かします。
特集2本目のHBR論文「最高経営幹部に最も必要とされるスキルは何か」では、職務経歴書の分析からコミュニケーション能力に優れ、多様な人材と協働し、他者の気持ちを理解できる「ソーシャルスキル」の重要性が指摘されています。
特集3本目は「共同CEO体制を成功させる方法」です。企業のトップは1人であるべきという考え方が広く浸透していますが、共同CEO体制で成功している企業もあります。トップが2人になっても対立や混乱を生じさせないポイントを伝えます。
特集4本目は、「経営者にふさわしくない人材の見極め方」です。筆者は、カルロス・ゴーン氏の事例を含めて、CEOのライフスタイルを調査し、不正行為と相関する資質を2つ特定しました。いま、トップの倫理観が厳しく問われていることがうかがえます。
特集5本目は、ハーバード・ビジネス・スクールのニティン・ノーリア前学長による「時代が変わり、リーダーも変わる」です。20年前に実施したリーダーシップ研究を現代に当てはめたところ、数十年ぶりの変化が起きており、それに応じてリーダーのあるべき姿が変化していることを指摘します。
特集6本目は、ピーター・ドラッカー教授による「プロフェッショナルマネジャーの行動原理」を再掲しました。これは、優れたプロフェッショナルマネジャーが実践する8つの習慣を説くという2004年の論文ですが、現代のリーダーにとっても大きな気づきがあるはずです。
また、日本版では100周年記念連載を立ち上げ、HBRゆかりの方々にインタビューし、同テーマを深掘りしていきます。連載初回は、ハーバード・ビジネス・スクールの竹内弘高教授(シニア・フェロー)です。
竹内教授は「これからのリーダーは幾多の矛盾を乗り越え、誰もが共感する未来に導く人物だ」と述べています。
これからのリーダーとは、人差し指を下げて指示するのではなく、「この指止まれ」の方式で、ありたい未来を描き、多様なフォロワーを束ねる人材かもしれません。経営管理やファイナンスといったハードスキルに長けた人物よりも、フォロワーのWHYを大切にし、未来を感じさせる行動を促し、共感を集めるようなソーシャルスキルを発揮するリーダーが活躍することでしょう。
ぜひ、ご一読ください。
(編集長・小島健志)