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筆者らの調査で、深刻なジェンダーバイアスに直面するのは30代半ばから40代後半の女性であることがわかった。そしてバイアスには、3つの共通項すなわち「不当な思い込み」「有益でない注目」「不平等なアクセス」が潜んでいるという。本稿では、調査で得られた女性たちの実体験を紹介し、男女平等の環境構築を企業がいかに推進すべきかを説く。

30代半ばから40代後半の女性が職場で直面するジェンダーバイアス

 筆者らは最近、世界各地のシニアエグゼクティブの女性100人以上に、ジェンダーをめぐる偏見や差別が深刻化したのはキャリアのどの段階だったかと質問した。するとおよそ半数が、ミッドキャリア、つまり30代半ばから40代後半と回答した。

 筆者らが行った別の調査によると、このような中堅時代に直面する偏見の強さは、時に不愉快な驚きをもたらす。2021年、ハーバード・ビジネス・スクール卒業後10〜20年が経過した女性を対象に調査したところ、職場で経験するジェンダーバイアスは卒業時に予想していたものより強いと答えた。白人女性で予想の3倍、有色人種の女性で予想の2倍だった(有色人種の女性は、職場に存在する差別の水準について、より現実的な認識を持っているのだろう)。

 女性がアーリーキャリアで直面する問題──男性の同僚に比べて真剣に扱ってもらえない、「オフィスでの家事」をより多く期待される、など──もたしかに重要だが、筆者らが調査した女性(実績のある高学歴のプロフェッショナル)は、気づかれにくい障壁を繰り返し乗り越えている。

 キャリアの初期は客観的な評価基準が用いられることで、評価や報酬にバイアスが忍び込みにくく、女性にとってまっとうな状況といえる。しかし、ミッドキャリアに差しかかると状況は一変する。この変化がどのようなものかを知るため、調査に協力してくれた女性シニアエグゼクティブ100人に、ミッドキャリアで偏見や差別から受けた影響について具体的に話を聞いた。彼女たちが教えてくれたさまざまな体験談や観察を詳しく調査した結果、「不当な思い込み」「有益でない注目」「不平等なアクセス」という3つの課題が繰り返し生じることがわかった。

 ミッドキャリアの女性の活躍の場を広げ、その潜在能力を最大限に引き出したいなら、マネジャーはこれらの課題を意識する必要がある。そこで、実際にエグゼクティブたちから聞いた一部を紹介しよう。

不当な思い込み

 ジェンダー・ステレオタイプに根ざしたいくつかの不当な思い込みが、ミッドキャリアの女性の妨げになっている。

 最も一般的な思い込みの一つは、子育てに積極的な女性ほど、同世代の男性に比べてキャリアへのコミットメントが弱いというものだ。この思い込みは、明らかに有害だ。複数の研究が示すように、採用や昇進、賃金の面で差別を生む。専門家はこうした差別を「母親ペナルティ」と呼ぶ。

 あるエグゼクティブは、自分が経験した「母親ペナルティ」の影響について、切々と語った。

 私がシニアマネジャーを務めていた部署で、ディレクターのポストが空きました。私ともう一人、男性のシニアマネジャーもそのポストに応募しました。私たちの当時の職責は同じでしたが、地域の売上高、顧客の数、直属の部下の数は、すべて私のほうが圧倒的に多かったのです。

 当時、私は妊娠していました。そして、昇進したのは同僚でした。彼を選んだ理由をバイスプレジデントに尋ねると、私のほうが優秀かもしれないが、出産後に職場復帰するかどうか確信が持てないから、もう一人の候補者を昇進させたほうが安全だと思ったと(内密に)言われたのです。

 現在では、あなたは妊娠しているから昇進を逃したと本人に言う人はいないでしょう。その代わりに、機会を失った別の「正当な」理由をひねり出すのでしょう。

 別の女性は、コミットメントに関する偏った思い込みは、そこまで明確ではないものの、いまも存在すると明言した。「『個人への配慮』という言葉で覆い隠されているけれど、何回か耳にしたことがあります。でも、優秀な男性がそれを言われることはめったにありません」

 さらに、話を聞いたエグゼクティブの多くが、女性は男性に比べてリーダーシップが不足しているという思い込みに遭遇していた。ある女性は、「10年ほど前、ミッドキャリアの時代に働いていた会社では、プレッシャーが高い仕事を遂行できるのは白人男性だけだという考え方が一般的でした」と語った。このような文化的なコンセンサスは、彼女が低い地位と低い賃金の仕事に追いやられるということを意味した。「私は重要な役割を担う人材とみなされていませんでした。自分のキャリアアップの道は閉ざされ、私はその会社を辞めました」

 別の女性は、「ミッドキャリアの女性は同じようなキャリアの男性に比べて経験が浅いという認識」、つまり女性は一般に男性より能力が低く、知識やスキルを習得するのに時間がかかるものとして扱われることについて、次のように語っている。「このような考え方が女性の昇進を妨げ、責任の増加に伴う適切な昇給を阻んでいるのです」