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心理的安全性は、従業員エンゲージメントや優れた意思決定、健全なチームダイナミクス、効果的な組織運営の重要な推進力である。近年は、リモートやハイブリッド型の勤務が定着したことで、心理的安全性に関する問題が複雑化している。本稿では、求職者が新たな勤務先を探す際に、その企業が心理的安全性を重視しているか否かを確認する方法を提示する。採用面接における本稿で紹介する5つの質問を通じて、その組織の心理的安全性に対する姿勢が明らかになるという。

求職者はいかに企業の心理的安全性を見極めるか

 トリシア(仮名)は筆者のエグゼクティブコーチングのクライアントで、バイオテクノロジーのグローバル企業で薬事規制戦略を担当する女性だ。先日、部門を横断して行われたズームの会議で、製品開発担当の副社長であるゴードン(仮名)が彼女のアプローチに公然と疑念を呈した。トリシアは、ゴードンが提案の論拠を理解しないまま、この機会に乗じて政治的な力を行使していると感じた。

 ゴードンの言動の理由が何であれ、この状況によってトリシアの心理的安全性は損なわれた。ハーバード・ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授は、心理的安全性を「アイデア、質問、懸念、間違いなどについて発言しても、罰せられたり恥をかかされたりしないという信念」と定義している。

 問題の会議はバーチャルで行われ、ゴードンはボストンの本社、トリシアは遠く離れたサンディエゴから参加しており、トリシアは自分が公然と恥をかかされたと感じた──しかも、物理的に距離があるせいで、ゴードンと即座に話し合って誤解を解消することもできなかった。

 心理的安全性が、従業員エンゲージメントや優れた意思決定、健全なチームダイナミクス、効果的な組織運営の重要な推進力であることは、長らく認識されてきた。コロナ禍以前は、心理的安全性といえば主に、従来型のオフィス環境における管理職と従業員のオープンなコミュニケーションに焦点を当てていた。

 だが最近は、仕事と私生活の境界がいちだんと曖昧になり、従業員とマネジャーのコミュニケーションを考える際にはリモート/ハイブリッド型のスタッフ配置、スケジュール管理や調整、さらに従業員の個人的な事情も考慮しなければならない。

 その結果、心理的安全性が脅かされる場面がより多くの領域に広がっている。ハイブリッドな勤務形態によって、心理的安全性の問題がいっそう複雑化しているのだ。

 このような新たな変数を考慮すると、将来の雇用主が心理的安全性を提供してくれるかどうかを求職者が面接の段階で評価することは、いちだんと難しくなってきている。本稿では、「赤信号」の職場をスクリーニングするための戦略を紹介しよう。

インクルーシブな表現と排他的な表現に着目する

 組織心理学者のジーナ・コックスによれば、求人票には微妙にバイアスのかかった表現が使われているケースがあり、それが心理的安全性を脅かす。「職務記述書には、あるタイプの応募者を惹き付け、他の応募者を落胆させるような非中立的な表現が含まれている場合が少なくない」と、コックスは指摘する。

 たとえば、「競争力」という表現が使われていると、男性よりも女性のほうが応募を躊躇しやすいことが分かっている。また、「ハッカー」や「ニンジャ」などの表現が含まれていると、ある種のより攻撃的な性格が望ましいというメッセージが示唆される。バイアスのかかった表現がある場合、雇用主がイメージに適合しない従業員に対して、心理的安全性を提供しない可能性は高まる。

 一方、好ましいのは、「プログラマー」「ソフトウェアエンジニア」「デベロッパー」といった中立的かつスキルに基づく表現だ。

 またコックスは、年配の応募者の心理的安全性を傷つけるおそれを考慮して、年齢差別的な表現にも注意を払うべきだと指摘する。「『デジタルネイティブ必須』など、求人広告の年齢差別的なステレオタイプに関連する表現は、ミレニアル世代やX世代を指しており、ベビーブーマーは含まれない。こうした表現を用いている場合も、差別につながることが分かっている」

 従業員全体を指す表現として「guy」や「he」などの性別に基づく代名詞を使うことも、企業文化の中に女性差別の傾向がある表れかもしれない。あらゆる応募者に心理的安全性を提供できる組織では、代わりに「they」のような性別を問わない代名詞が選ばれる。このような表現なら、ノンバイナリーを含むあらゆるタイプのジェンダーアイデンティティを受け入れることができる。