ゾンビ企業は金利上昇を乗り切ることができるか

 目下の経済状況は、ゾンビ企業にとって好ましいものではない。金利の上昇は、ゾンビ企業を苦しめる材料になる。その理由はいくつかある。

(1)金利が上昇すれば、経済における需要が縮小する。そうなれば、多くの企業は売上げが減る。その結果として、ゾンビ企業が利払いに回せる資金がさらに少なくなると予想できる。

(2)低金利でも利払いに苦労している企業は、高金利の下では利払いにますます苦労することが明らかである。そのため、ゾンビ企業にとって新たな資金調達がいっそう難しくなる。

(3)高金利の時代がやって来た場合、投資家や金融機関はわざわざゾンビ企業への貸し付けを行おうという意欲が弱まる。もっと安全な資金運用方法により、十分に収益を上げられるからだ。

 このような事情により、金利が上昇すれば、倒産に追い込まれるゾンビ企業が増えるだろうと、ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、ノエル・ヘバートは指摘している。さらに、それまで財務状態が健全だった企業がゾンビ化するケースも増えることが予想できる。金利が高くなれば、それまで利息を支払えた企業が利払いに苦労し始める可能性が高まるからだ。

 しかし、ゾンビ企業にとって倒産が唯一の選択肢ではない。資産を売却するという選択肢もある。その選択肢を選ぶゾンビ企業が多くなれば、財務状態が良好な企業には大きなチャンスが訪れる。財務状態が苦しい会社が事業売却に踏み切る可能性を注視しているのは、プライベート・エクイティだけではない。今後、急速なペースで金利上昇が進めば、潤沢なキャッシュを有する企業や、資金調達を行う能力を持っている企業も、買収に乗り出す可能性がある。

 一方、それほど金利が上昇せず、世界の国々の中央銀行がいわゆる「ソフトランディング」の実現に成功する可能性もある。景気後退に突入することを避けつつ、インフレを抑制できるパターンだ。ここ最近、ジャンク債の相場が上昇しているのは、米国のインフレに関するポジティブなニュースを受けた動きと見ることができる。ゾンビ企業へのプレッシャーがどれくらい高まるかは、今後の経済状況に大きく左右されることになる。

生産性の謎

 ゾンビ企業に関する研究は概して、金利が上昇すればゾンビ企業が減り、ゾンビ企業が減れば、生産性が向上するという見方を示す。生産性が低く、不振に喘いでいる企業が市場から退場することは、長い目で見れば経済全体にとって好ましい、というわけだ。

 確かにその通りなのかもしれない。しかし、生産性を高めることを目指すのであれば、別のところに目を向けたほうがよい。

 生産性を向上させる手段として金利を操作するのは、あまりに効率が悪い。しかも、金利上昇により景気後退が訪れるとすれば、経済は浄化されるどころか、傷跡が残る可能性が高い。

 経済の潜在能力を高めたければ、地道な取り組みが不可欠だ。経営不振に陥っている企業は、業績改善に励む。財務状態が健全な企業は、イノベーションに精を出し、ライバルと競い合う。投資家は、投資対象を調査して、財務状態が良好な企業と危うい企業をよく見極める。重要なのはこのようなことである。

 ゾンビ企業の割合は、中央銀行の政策だけでなく、日々のビジネスにおける意思決定に大きく左右されるものなのである。


"Can Zombie Firms Survive Rising Interest Rates?" HBR.org, September 02, 2022, Updated September 07, 2022.