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新しい分野でキャリアをゼロから構築しようとする時は、誰でも戸惑うものだ。「これまでの人脈や経験が通用しないのではないか」と感じることも少なくないが、実際には思っている以上に転用が効く。とはいえ、新たな仕事に就いたならば、物事を十分に理解できていない段階であっても、意識的にキャリアパスの構築を行っていくことが欠かせない。本稿では、新たな領域で自分自身が望むキャリアを手に入れるための4つの戦略を紹介する。

これまでの人脈や経験は「ゼロ」にはならない

 プロフェッショナルが自己変革を図ろうとする時には、「ゼロから始めなければならず、これまでの人脈や経験は新しい分野では通用しない」と感じることが多い。しかし、そのスキルやネットワークは、あなたが思っている以上に転用が利くものだ。とはいえ、新しいキャリアで仕事の仕方に慣れるまでには、しばらく戸惑うことがあるのも事実である。

 筆者は、拙著Reinventing You(未訳)を執筆するための調査研究を通じて、新たな仕事に就き、まだ物事をよく理解できていなくても、キャリアパスを構築していくための4つの戦略を発見した。

 ●新たな分野のキャリアについて、具体的な情報を把握する

 新たな分野でキャリアを築き始めたばかりの時は、次のような重要な疑問を抱くかもしれない。どのようなスキルや行動が評価されるものか。反対に、キャリアの停滞につながるのはどのようなスキルや行動か。リーダーの地位に就くには、通常どれくらいかかるか。どのようなことを期待すべきか。

 たとえ、それが困難なプロセスであっても、典型的なパターンを把握すれば、物事をコントロールできていると感じられるだろう。たとえば、「シニアリーダーには、ほぼ必ず金融業界での経験がある」「バイスプレジデントに昇進するには、通常X年かかる」といったことだ。

 情報収集のために、上司や同僚にインフォメーショナルインタビューを行い、会社や業界で成功している人たちに共通する特性について、臆せずに尋ねることだ。また、シニアリーダーや昇進スピードが速い同僚の経歴やリンクトインのプロフィールを読み、彼らがたどってきた道を遡ることで、同じようなロードマップを作成することもできるだろう。

 ●「みずから主導権を握らなくてはいけない」ことを認識する

 企業にはかつて、従業員のための明確なキャリアパスが用意されていた。大学卒業後にコースに乗り、ある程度の成績を出せれば、エスカレーター式で、また一つ上の地位、また一つ上の給与水準へとスムーズに運ばれていき、30年後にそのコースを降りるというものだ。よくも悪くも、このように画一的で標準化されたキャリアパスは、現代の企業生活ではほぼ消滅しているのだが、多くの従業員はそのことを十分認識していない。

 筆者が講演でよく話すテーマがある。一つは「自分が望む機会を追求するには、みずから積極的に手を挙げる必要がある」ということだ。そしてもう一つは、「特定の狭い分野で、急な坂道を猛スピードで登るかのように半ば保証された昇進をするよりも、(新しい地域や機能的役割のように)横方向に移動するほうが多い」ことである。筆者は「キャリア月間」の活動の一環として企業に招かれて、このようなことを従業員に対して説明してほしいと頼まれるのだ。

 ある分野に新たに参入した人は、自分から積極的に関与せず、決められた通りに物事を進めるのではなく、みずから昇進を計画し、そのために努力しなければならないことを最初から認識していれば、競争で優位に立つことができるはずだ。