アルゴリズムを管理する方法
では、どうすればよいのか。以下では、アルゴリズムを管理して、測定と監視の対象を定義するための、6つのステップから成る方法を紹介する。このアプローチの主眼は、誤った状態を測定し、どこに無駄があるのかを明らかにすることだ。パフォーマンスを監視し、優先的に改善を行い、アクションがパフォーマンスを向上させているか否かを把握するために、これらのステップは不可欠である。
(1)企業目標を定義する
アルゴリズムが影響を及ぼす企業目標の特定は、基本である。利益や投資利益率(ROI)でも、顧客生涯価値(LTV)でもよい。例として、ある小売企業はデジタルマーケティングのアルゴリズムの目標を、顧客生涯価値と定めた。
(2)最小粒度を特定する
現時点におけるミクロな意思決定の粒度と、その意思決定を行うために可能な最小のデータ粒度を把握する。例の小売企業は、キーワードレベルでの入札をしていたが、地域、デバイス、時間帯やその他の顧客特性に基づく入札も可能であることに気づいた。
(3)成功と制約を定義する
許容できるパフォーマンスを決める。これは常にビジネスリーダーの判断となり、通常はリスク選好度に関する議論へとつながるはずだ。このステップでは、ミクロな意思決定レベルでの制約が設定される。
例の小売企業は、広告で6カ月以内に利益を回収すると決め、そのリターンが期待できる限りは投資を進めることとした。
(4)間違いを定量的に把握する
間違いのコストを理解する。制約から逸脱したパフォーマンスにドルの価値を代入する重要なステップだ。単に無駄な支出を測定すればよい場合もあれば、機会損失を推計するモデルが必要なケースもある。
例の小売企業は、無駄が生じている2つの主な部分を発見した。利益率の高い顧客を多く引き寄せるキーワードに十分な費用をかけず、利益の回収に6カ月以上を要するキーワードに費用をかけすぎていた。
(5)パフォーマンスを測定する
無駄と機会損失の合計はどの程度か。このステップでは、制約から逸脱したビジネス価値の合計を把握するために、ステップ2で設定した最小粒度でのパフォーマンスを分析する。ここでよくある誤りは、現在のオペレーションと同じレベルの粒度で分析することだ。これでは自己実現的となり、問題と機会の両方が隠れてしまう場合が多い。
例の小売企業は、顧客生涯価値に関する無駄な支出をX百万ドル、機会損失をY百万ドルと特定することができた。
(6)何が無駄を生んでいるのかを把握する
最後に、アルゴリズムのどの要素が無駄と機会損失を生む最大要因なのかを知るために、4P(目標、精度、予測、方針)の観点からパフォーマンスを分析する。
例の小売企業は、入札アルゴリズムの各要素に改善の余地があるものの、機会損失を生んでいる唯一最大の根本原因は精度の問題であることを発見した。
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アルゴリズムの管理は、言わば人材管理のようなものである。アルゴリズムのパフォーマンスをどのように評価して管理するか。これらを理解することが、成功と失敗の分かれ目となるのだ。
"Measuring Your Algorithm's Performance," HBR.org, September 14, 2022.