●第3段階:新規事業の創出
新規事業の創出は、既存のパイを大きくすること、あるいは新たな収益ラインを生み出すことだ。顧客体験では、製品やサービスの販売から、新たなサブスクリプションベースのビジネスモデルへの移行が挙げられる。オペレーションであれば、データやアナリティクスを活用し、製品やシステムの運用パフォーマンスを正確に予測することができるだろう。
これらは、組織の既存のプロセス・構造・能力に挑戦するものであり、新しい働き方を必要とするため、真の変革といえる。既存のオペレーションモデルから新しいオペレーションモデルへの移行であるため、リーダーシップがカギを握る。
この段階では、従来の線形的なサプライチェーンからエコシステムに移行するのに伴い、組織の境界線の見直しが必要になることも少なくない。高いレベルのDX成熟度が要求されるといえるだろう。
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本稿で紹介したDXの3段階は、完全に線形的なものだろうか。ほとんどの組織は、さまざまなイニシアチブを組み合わせ、ポートフォリオの形で取り組みを進める。ポートフォリオで3つの段階すべてがカバーされている可能性があることから、線形的なものと考えにくい。
たとえば、小さくとも初期段階における成功、つまり「クイックウィン」を実現するために、ある程度のモダナイゼーションを実施すると同時に、全社的なグローバルプログラムを実施したり、実験や比較試験を通じてビジネスモデルを革新したりすることが考えられる。
ただし、組織学習の観点から見ると、大企業のデジタルリーダーが初期段階を飛び越えたという例は稀である。DXを成功させるカギは、とにかく先を急がないことだ。第1段階から始めて、そこに力を注ぎ、必要なリソースを投入して、正しく実施しなければならない。デジタル学習曲線の段階を追って、組織のデジタル成熟度を高めることが、成功の可能性を高めるのだ。
"3 Stages of a Successful Digital Transformation," HBR.org, September 20, 2022.